エッセー・評論

ピアニスト牧村英里子と世界のヒトビト

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イタリア・ファエンツァのドーモ前にてデモンストレーション 瀬戸工房にて ギャラリー艸居にて(写真:艸居提供) 「ロエベ クラフト プライズ2019」ノミネート作品、銀彩スカルプチュァルフォーム Sculptual Form自然釉(写真:艸居提供)
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イタリア・ファエンツァのドーモ前にてデモンストレーション

瀬戸工房にて

ギャラリー艸居にて(写真:艸居提供)

「ロエベ クラフト プライズ2019」ノミネート作品、銀彩スカルプチュァルフォーム

Sculptual Form自然釉(写真:艸居提供)

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イタリア・ファエンツァのドーモ前にてデモンストレーション

瀬戸工房にて

ギャラリー艸居にて(写真:艸居提供)

「ロエベ クラフト プライズ2019」ノミネート作品、銀彩スカルプチュァルフォーム

Sculptual Form自然釉(写真:艸居提供)

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  • Sculptual Form自然釉(写真:艸居提供)

 毎日眺めて手に抱き、愛でて愛でて愛で尽くしたいという陶芸作品に出逢ってしまった。

 世界中の美術館やギャラリーで美の結晶を鑑賞してきたが、「物」に対して今まで恬淡とした距離感を保ってきた。にも関わらず、この焼物だけは何としても我が手にという、湧き上がるような渇望にとらわれたのは一体どうした訳だろう。

 陶芸家、道川省三氏による渾身の創造物について、静謐に語るなど到底無理だとばかり、世界の名だたる美術評論家たちが興奮を抑えきれぬ筆致でレビューを書いているが、さもありなんと氏の作品集を広げながらこのコラムをしたためている。

 今年の8月半ばから、コペンハーゲンで道川氏の展示会が開催される。展示会会場のオーナー夫妻と私がたまたま友人ということが分かり(A.PetersenのHPはこちら)、道川氏と懇意の高校時代の同級生が仲介の労を取ってくれ、私は先生が居を構える愛知県の瀬戸に向かった。包み込むような温かい笑顔で道川ご夫妻は初対面の私をご自宅に迎えて下さった。

 これまで道川氏の作品を写真で拝見していたが、縦と横の写真の中で縦横無尽にねじれ、渦巻く立体の焼物はもはや立体の概念を超え、既に私は無限の熱量を持ち合わせた予測のつかない不可思議の世界へと誘(いざな)われていたのだった。

 ご自宅の和室に置かれた作品の数々に、実際この手で触れさせて頂いた。粉引の滋味溢れる渋み。静かな光芒を放つ銀の釉薬。土の確かな重みと質感。表と裏の表情の豊かさ。光と陰翳(いんえい)。

 これらの複雑な多角形の陶芸作品が「ろくろ」により制作されていることに驚いてしまう。

 20代だった道産子の道川青年は、魅入られるようにして焼物のメッカである瀬戸に移住した。以来、伝承される技法を学び、時に従い、時に真っ向から伝統に対峙して、数えきれないほどの作品を創りながら学んで学び尽くし、次第に独自の革新的な創作活動へと移行していった。

 五行(火・水・木・金・土)の全てがごく自然に、ごく有機的に一つの作品へ凝集されている。五行とは、前述の五つの元素が相互に響き合って、その消滅盛衰によって天地万物が変化し循環するという抜本的な思想に由縁する。

 人がその生を全うした時、遺された肉体は焼かれて灰となり、その灰はやがて土に還元される。道川氏は陶芸のための土を掘るにあたり、有機物がもつ一種の輪廻のような自然界の宿命にしばしば想いを巡らせるそうだ。

 道川作品には一カ所穴が空いている。そこには焼物の原始的な発想、すなわち実用性に対する敬意がある。その穴からそっと顔を覗かせる野の花一輪。

 ひとつひとつ、生命の存在を確かめるように触れていきながら、銀彩が施された焼物を手にした時、私は思わず物騒なことを言ってしまった。

 「道川先生、もし私が盗賊の親分なら、はばかりながら真っ先にこの作品を頂戴します」

 道川氏は笑いながらこう仰った。「ああ、それは今年のロエベ賞にノミネートされた作品だから、東京に送り出してしまうよ」

 2019年2月6日、スペインのロエベ財団は「ロエベ  クラフト  プライズ 2019」に選出されたアーティストを発表した。100ヶ国以上からの2、500件を超える応募の中から、専門家による厳しい選考をくぐり抜けた僅か29点の作品の中に、私が畏れ多くも持ち去りたいと口走った作品が選ばれた(写真「銀彩スカルプチュアルフォーム」)。6月25日の大賞受賞者発表が待たれている。

 今年で陶芸人生41年目となる道川省三氏。世界中で熱狂を巻き起こして来た氏の日本での展示会は実に5年ぶりとなる。2019年3月2日から3月30日まで、京都のギャラリー「艸居(そうきょ)」にて開催される個展への案内文の抜粋をここに掲載させて頂く。

《陶芸をはじめて、去年40年を迎えることができました。記念の展示会は一昨年のロンドンからはじまり、去年はパリ、フランクフルト、ミラノと続きこの3月シルクロードの終着地点京都の艸居ギャラリーにて終わりとなります。ー中略ー 5年ぶりの日本での個展となります。新作41点を展示いたします。春の京都におこしいただき是非ご高覧いただければ幸いです。》

 道川氏との邂逅の帰途、次のリサイタルで弾くヨハン・セバスチャン・バッハの作品について、ピアニストとしてのある想念が過(よ)ぎった。1685年生まれの大作曲家の作品を、コンサートホールにおいて当時の楽器とは全く異なる最新のメカニズムを装備したグランドピアノで弾くという行為は、一体何にあたるのだろう。伝承される技法を尊びながら同時に伝統を守りつつ、そして革新に向かっていると言えるのだろうか。ピアノという楽器のメカニズムが革新的に発展したのであって、我々ピアニストが何かを新しく生み出したわけではない…。多くの音楽家の前に繰り返し立ちはだかる壁に、久々にぶち当たった気がした。

 その答えの緒を探しにこの3月、私の京都通いが続く。道川省三氏の作品を何度も見ることで、このジレンマはごく自然に融解されてゆくだろうと確信している。

 京都で展示される作品を、皆さんの眼でしかとご覧頂きたい。

    ■

 道川省三展初日の3月2日(土)の予定は次の通り。

 アーティストトーク&ワークショップ:午後2時30分~3時30分(艸居アネックス)京都市中京区一之船入町375 SSSビル 3F

 オープニングレセプション:午後4時~6時(艸居)京都市東山区元町381ー2

道川省三氏のHPはこちら

ギャラリー 艸居(そうきょ)のHPはこちら

2019/2/26

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