神戸新聞社と関西学院大学はこのほど、包括的な連携協定を締結した。人口減少や高齢化、過疎化が進む中で、地域に根差した新聞社と大学が連携することで、地域の課題にどう貢献できるのか期待が集まる。協定締結を受け「知力と情報発信力をいかした地域共生」をテーマにしたシンポジウムが神戸市内で開かれ、両者の持つ資源で地域の課題を解決していく意義や具体的な取り組みについて語り合った。
▼関西学院大学教授「NEWS ZERO」メーンキャスター 村尾 信尚氏 地域の可能性を探ろう
地域力の構成要素は土地、住民、コミュニティーのありようの三つだ。
11月にパリで同時多発テロが起き、取材で現地に出向き、考えたことがある。襲撃現場で聞く言葉は自由、平等、友愛であり、フランスの国旗が掲げられ、ラ・マルセイエーズ(国歌)が歌われていた。オランド大統領は「これは祖国を超える人類の価値観に対する挑戦だ」と憤った。フランスのイスラム教信者は「イスラム国(IS)は私たちをも攻撃した」と嘆いた。宗教、言語、言葉の違いを乗り越え、共通の理念で集まってきた人たちだからだ。コミュニティーが何によって結束力を見いだしているかを示す一例だ。
日本がどういう状況に置かれているのかを考えてみる。2015年で1億2700万人の人口は2050年に9700万人へ、このうち生産年齢人口(15~64歳)は7700万人から5000万人へと減ると予測されている。消費する人も、生産する人も急激に減るわけだ。
安倍政権は「実質経済成長率2%」の達成を掲げているが、私は無理だと思う。経済成長は働く人が増え、かつ1人当たりの労働生産性が伸びて実現するものだからだ。今は不可能な夢を語るより、どう対処すべきかを論じるべきだ。私は、移民の問題を考えなければならないと思っている。
ラグビーのワールドカップ(W杯)で日本は南アフリカを破った。日本代表には何人かの外国人がいたが、試合を見ていて違和感なく感情移入できた。ラグビー代表のように「日本に身をささげようと思う共通理念を生み出すことができるのか」が今、地域、国に問われている。
国内総生産(GDP)の世界シェアは中国、米国、インド、日本の順だ。世界の経営者が成長市場で人口も多い中国やインドへの投資を考えるのは自明の理だ。兵庫、神戸の未来も海外に目を向けることでチャンスは増える。その際に、地域の持つ可能性を考える役割を果たすのが大学でありメディアだ。そこに地域の力がうまくかみ合って海外に目を向けることができれば、新たな兵庫、神戸の時代につながる。
例えば国際協力機構(JICA)や日本貿易振興機構(ジェトロ)、大使館を巻き込み、地域の企業と見本市を開けば、途上国のニーズとの出会いの場ができ、世界につながっていくことができる。
▽むらお・のぶたか 1955年岐阜県生まれ。78年一橋大卒業後、大蔵省(現財務省)入省。主計局主計官、国債課長、環境省総務課長などを歴任。2002年退官し、03年10月関西学院大教授に就任。06年から報道番組「NEWS ZERO」(読売系)メーンキャスターを務める。
▼神戸新聞社代表取締役社長 高士 薫氏 地域の結びつき強める
神戸新聞は2015年3月にパートナーセンターを開設した。合言葉は「もっといっしょに」だ。この言葉には二つの意味を込めている。地域社会が抱える課題の解決に向けて一緒に働かせていただきたい、という思い。そして兵庫、神戸にある多くの人、会社、大学をもっと結びつけたいと、いう思いだ。関西学院大学とは、県内の中小企業と県内の学生をマッチングする「Mラボ事業」にも参加いただくなど、既にさまざまな取り組みを行っており、神戸スタートアップオフィス事業もいよいよ始まる。関学の知を借りながらもっと地域の課題のお役に立つためのコーディネート役を務めていきたい。
▼関西学院大学学長 村田 治氏 教育で関西経済支える
本学は1889年9月28日に神戸・原田の森、現在の王子公園で創立した。その後1929年に西宮・上ケ原へ移転。神戸に本社を持ち、西宮に工場を持つ神戸新聞社とは縁を感じる。既に取り組んでいる竹田城跡の観光事業や学生編集会議などのプロジェクトを加速させるとともに、神戸市のスタートアップオフィス事業も研究教育の面からバックアップしていきたい。本学は文部科学省から「スーパーグローバルユニバーシティ」に認定された。これを生かし、地域のまちおこしもグローバルな視点で考えていく。神戸新聞社と神戸、関西経済をどのように発展させていくかをともに考え、実行していきたい。
▼関学大の取り組み 企業と共同で商品開発
関学大商学部・石淵教授のゼミでは、神戸の老舗牛肉店「大井肉店」、食品メーカー「伍魚福」、神戸新聞社と共同で「神戸ビーフラスク」を開発した。神戸を訪れたビジネスマン向けにお土産を企画する商品開発プロジェクトで、同店のビーフエキスを使った。商品化ノウハウを持つ伍魚福が協力し、神戸新聞社などの地方紙でつくる通販サイト「47CLUB」に出品。ラスクは来年1月21日から関西地域の主要駅、空港の売店などで販売される。
▼活発な取り組みに期待 交流会に130人参加
シンポジウムの後、参加者同士の交流会が開かれ、神戸新聞社、関学大の関係者、自治体関係者ら約130人が参加。和やかな雰囲気の中、新たな交流の輪が広がった。
あいさつに立った久元喜造・神戸市長は「神戸新聞社と関学大の協力で、IT起業家を育成する神戸スタートアップオフィス事業が始まる。野心的な取り組みだが、神戸に内外から優秀な若者が集まるよう取り組んでいきたい」と述べた。
また、多次勝昭・朝来市長は「神戸新聞社と関学大の力を借りて竹田城跡の観光振興、定住促進に適切な示唆をいただいている。今後も協力をいただきながら素晴らしい街づくりに努めていきたい」と期待を語った。
【関西学院大学】 1889年創立。スクールモットーは「Mastery for Service(奉仕のための練達)」。西宮市、三田市、大阪、東京にキャンパスを展開し、11学部14研究科を擁する総合大学。研究推進社会連携機構社会連携センターは地域連携などの総合窓口として、学生の課外活動のサポートや、企業・自治体などとの連携、地域貢献活動を推進している。
【神戸新聞社】
1898年創刊。米騒動で焼き打ちに遭い、神戸大空襲では全焼、阪神・淡路大震災では全壊の被害を受けたが、休むことなく発行を続けた。現在の発行部数は約52万部。2015年3月、「もっといっしょに」を合言葉に神戸新聞パートナーセンターを開設。地域の大学、企業、自治体などと連携し、地域の課題に対して、ともに考え、発信する取り組みに力を入れている。
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