兵庫県加古川市内の企業が抱える課題の解決に向け、甲南大(神戸市東灘区)の学生が提案する「加古川『知』を結ぶプロジェクト~行政・大学・地元メディアによる地域の課題解決」の成果報告会がこのほど、同市のウェルネージかこがわで開かれた。5社の課題について、4ゼミ計7チームが調査研究した成果を報告した。
■西村ゼミ(3年生)が最優秀賞
「加古川『知』を結ぶプロジェクト」は、商品企画やマーケティング戦略など中小企業が直面する経営課題をテーマに、大学ゼミが調査研究して解決策を提案することで、地元の企業を応援し地域活性化につなげる共同プロジェクト。
地域の産業振興に取り組む加古川市と、専門的な知見を持つ甲南大が主催。加古川市と地域課題解決に向けた協議を続け、甲南大と連携協定を結ぶ神戸新聞社が共催し、県内中小企業と大学生の就職マッチングを目指す「Mラボ」事業のノウハウを生かして取り組んだ。
昨年5月、3者が連携してプロジェクトに当たることが決まり、9月に甲南大の4ゼミ7チームと加古川市内の企業5社をマッチング。課題のヒアリング、意見交換などを経て、研究テーマを設定し、学生が専門的なアプローチから調査研究に着手。11月の中間報告会を経て、磨き上げた解決策を発表した。
成果報告会では1チーム10分の持ち時間で公開プレゼンテーションを実施。論理性や独自性、プレゼン力などを基準に、4人の審査員による評価が行われた結果、最優秀賞に清酒製造業「岡田本家」を研究した西村ゼミ3年生が選ばれた。
<最優秀賞>西村ゼミ3年生×岡田本家 テーマ「こだわりの日本酒で需要喚起」
「加古川市民と若い世代にもっと日本酒を」という岡田本家の意向に沿った需要促進策を発表した。
毎年8月に約7万人を集める「加古川まつり」の花火大会会場で量り売りを行い、加古川市の成人約22万人をターゲットに日本酒を紹介することを提案。少量ならその場で飲み、多い量なら自宅に持ち帰るなど、さまざまなニーズに応えられると説明した。
また、20~30代女性は清酒の飲酒状況が低い一方、おいしいと感じた経験から飲酒が増えた割合が高いという統計を受け、日本の伝統と現在のライフスタイルを融合した「和モダン」なイベントを酒蔵で開くことも提案。日本酒カクテルの試飲▽オリジナルラベルの作成▽酒を混ぜた美容効果のある足湯「酒湯」の体験-などのブースを設置するアイデアで、統計的にこの世代の女性は他人に遅れないように購入する「バンドワゴン効果」の影響を受けやすいことから「会員制交流サイト(SNS)で口コミが広がれば、直接的にアプローチしなくても新規顧客が獲得できる」とした。
<加古川市賞>西村ゼミ2年生C×千代田繊維工業 テーマ「親しみあるちよだ」
「CSV(共有価値の創造)」と呼ばれる経営戦略を元に、作り手が目の届く範囲で販売する距離感などに価値を見いだし、顧客をパートナーと考える「アンバサダー戦略」を提案。ネスレ日本(神戸市)がアンバサダー戦略を投入した結果コーヒーメーカーの販売台数が1・8倍になった事例を挙げ、戦略を千代田繊維工業に適用して発表した。
顧客から募集したアンバサダーを対象に、アトリエでイベントを開き、モニターとして改善点を聞くための新商品先行プレゼントや意見交換会の実施を提案。PR動画の放映も提案し、人物に焦点を当てた物語性のある動画を試作して発表した。
<甲南大学賞>西村ゼミ2年生B×千代田繊維工業 テーマ「CHIYOJI INNOVATION」
インターネット通販「楽天市場」で30~50代女性を中心に高評価を得る一方、アンケート調査では千代田繊維工業を知る人が3%にとどまることに注目。同社自体も「弱み」と感じている知名度を高めることで、新規顧客が取り込めると考えた。
ネット上で一足の靴下を見る時間が24・7秒とのアンケート結果をふまえ「性能キャッチコピー戦略」を立案。性能別に作ったキャッチコピーからアンケートで好感度や購買意欲が高かった「履く半身浴」「健康は足元から」「脚からhotしよ?」を、ウールやシルクなどの素材に合わせて提案した。仮説の検証も行い、来客数の7割が好感度や購買意欲を持つと示した。
<神戸新聞社賞>西村ゼミ2年生A×千代田繊維工業 テーマ「生涯愛される千代田」
「楽天市場」の利用者を基に、仮想ユーザー像を用いる「ペルソナ分析」を行い、求められる価値を「全ての人に優しい品質」と定義して赤ちゃんブランド設立を提言。アンケート調査を踏まえ、日本製やオーガニックコットンなど良質な素材を用いた屋外用靴下、室内用レッグウオーマーの商品化を提案した。
赤ちゃんブランド設立によって企業イメージが上がり、千代田繊維工業が課題とする企業価値の向上を実現。現状展開する大人向け、子ども向けの2ブランドに赤ちゃんブランドを加えることで、一貫した価値伝達が可能になり、生涯愛される企業に成長できると考案した。
<特別賞>渡邊ゼミ4年生×千代木工 テーマ「『なくてはならない』企業」
千代木工がかつて取り組んだ相手先ブランド生産(OEM)契約と現在進めるネット通販について、構成要素を可視化する「ビジネスモデルキャンバス」をそれぞれ作成。異なる経営資源を積み重ねた結果として、消費者からの評価が高いと分析し、ニッチ市場を対象とすることなどを提案した。
<特別賞>三上ゼミ3年生×ファインシステム テーマ「魅力的なホームページとは~SNSとの共存を図る~」
直帰率の高さなど、ホームページの課題点を挙げた上で、選択時にSNSを利用する大学生が多い「カフェ」をテーマにして魅力的なホームページづくりを提案。店のコンセプトなどSNSでは分からない情報を盛り込むことを提言した。
<特別賞>北居ゼミ2年生×栗林食産 テーマ「米粉の可能性~新市場開拓に向けて~」
訪日外国人の土産用に国産米100%使用のパンケーキミックスを開発し、外国人来客数の多い「人と防災未来センター」などで販売することを提案。「グルテンフリー」など特徴を明記したカラフルなパッケージも考案して発表した。
<参加企業一覧>
■千代田繊維工業 1951年の創業以来、靴下づくり一筋。オーガニックコットンなどの天然素材を使用し、加古川市内の工場で製造する自社ブランド「千代治のくつ下」がネット通販で人気を集める。オリジナル靴下の受託製造も行う。
■千代(せんだい)木工 木製品を自社工場で製造・販売。ネット販売会社に向け在庫負担のない仕組みを築き、自社ブランドによる無垢材木枠ミラーのネット通販店「SENNOKI(センノキ)」も始動。木枠と鏡面がフラットなミラーが高い評価を得る。
■ファインシステム 1986年に販売管理ソフトの開発から開始し、ホームページ作成などを担うIT関連会社。ICチップを利用した自動計測システムでも知られ、マラソンなどのスポーツ大会で最新の技術と機器を使用しながら運営を支える。
■栗林食産 穀類などをあらかじめ混合したプレミックス粉を製造販売。国産米粉を使ったお好み焼き粉やホットケーキミックスなどのシリーズは多くのリピーターを獲得している。和洋菓子、パンなど業務用原料の開発も進める。
■岡田本家 創業140年の市内唯一の酒蔵。大手メーカーの下請けによる大量生産を脱却し、2010年から地酒造りを開始。加古川の伏流水で仕込む「盛典」などを手掛け、地元の農業高校や営農組合と共同で新製品の開発にも取り組む。
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