「もっといっしょに」を基本理念に神戸新聞社は昨年3月、地域パートナー宣言を発表しました。ともに兵庫に生きるパートナーとして、地元新聞社ならではの情報発信力、ネットワーク力を基に、もっとお役に立ちたい。その具体的な取り組みの一つが、地域の課題解決に地元とともに向き合う「地域共生プロジェクト」です。最初の課題として選んだのは「天空の城」で知られる朝来市の竹田城跡を生かしたまちづくりへの協力でした。
▼背景 一気に観光地化、対応急務
2015年度、約42万人が訪れた国史跡・竹田城跡(朝来市和田山町)。ピーク時に58万人を記録したブームは一息ついたが、依然として全国から注目を集める観光地だ。
人気のきっかけは映画「あなたへ」や大手検索サイトのCMで取り上げられたことだった。11年度までは年間10万人未満だった観光客が急増。史跡保護、登城時の安全確保、交通量増加などの対応が急務となった。
対策として朝来市は14年末から3カ月間閉山したが、地域の商業活動に影響が出た。市民との意思疎通も十分ではなく、開かれた場で話し合う機会が求められていた。短期間で急激に観光地化したため、さまざまな地域課題が表面化していた。
この時期、朝来市は第2次総合計画を策定し、人口政策を最重要課題に挙げた。兵庫県などの推計では約40年後には同市の人口は4割弱減少する。竹田城跡の知名度を生かし、周辺地域の観光振興や定住促進、雇用創出の契機にできないかを模索していた。
こうした市特有の課題と、地域課題に向き合おうとする神戸新聞社の基本理念とが合致し、昨年4月、両者でまちづくりに関する連携協定を結んだ。
▼経過 議論重ね、ビジョンを形に
まちづくり協定の締結を機に、神戸新聞社は市民主体の会議の開催を提案。市も同意し15年4月、市民ら約30人による竹田地域ビジョン会議が発足した。
委員には地元区長、観光業者らに加え、NPOの若手リーダーらも参加。関西学院大の八木康夫教授、甲南大の西村順二教授が専門委員に就任した。コーディネーターは神戸新聞社のパートナーセンターが担った。
計5回の会議で竹田城跡の冬季閉山を3カ月から2カ月に短縮することを決め、7月に答申した。このとき、閉山中も観光客に来てもらえるよう「竹田城跡だけに頼らない」まちづくりを考えることも委員全員で決めた。
ビジョン会議Ⅱは10月にスタートし、約40人が参加。神戸大大学院人文学研究科の奥村弘教授も専門委員に加わった。具体的な施策を検討するため、観光ルート▽グルメ▽広報・PR-の3分科会で議論を重ねた。
観光ルート分科会は関学大生も協力し、竹田地区の魅力を調べた。グルメ分科会は道の駅など5施設が冬の名物・岩津ねぎを使った「雲海ぐるめ」を考案。広報・PR分科会は「観光客に親切なまち」への脱皮を提案した。
16年3月、ビジョン会議は3分科会の提言をまとめて市に答申。多次勝昭市長は「できることから実現させていきたい」と答えた。
奥村教授は「会議で竹田の豊かな住環境が再認識された。今後は歴史・文化の調査も進め、魅力的なストーリーを構築してほしい」と話している。
▼次のステップへ 赤曽部美鶴さん(54)朝来市芸術文化課長
観光交流課長としてビジョン会議の運営や調整、提言のまとめに関わった。会議には市の若手職員も参加し、使命感を持って議論してくれたのではないだろうか。これで終わりにするのではなく、地元の方や会議に関わった人たちとの信頼関係を強くし、まちづくりの次のステップにつなげていくことが重要だと感じている。
▼学生と新たな縁 松本智翔さん(41)建築士、妙泉寺副住職
竹田地域と縁がなかったような大学生がビジョン会議に参加し、お互いの意見を交わせたことが収穫。市外在住者の声が聞けたことは新鮮だった。会議で知り合ったことがきっかけで今年夏、竹田で開催する音楽祭に出演する学生もいる。観光客の立場で竹田を見てくれる地域外の人とのつながりを大切にしていきたい。
▼地域全体のため 福丸泰正さん(43)道の駅「但馬のまほろば」支配人
但馬地域は人、食材、観光地など資源が豊富だ。ビジョン会議に参加したメンバーを中心に、自分たちが住んでいる地域がいいところだという認識を持つ人が増えてきたのではないかと感じている。自己の利益だけではなく、地域全体がどう活性化していくかという視点で、今後も継続的な取り組みが必要ではないか。
▼魅力再認識した 石原啓一さん(69)竹田区区長
分科会の委員や学生たちが実際に町を歩き、魅力的なスポットを地図で示してくれたことで、地元住民が気付かなかったような価値を再認識した。民家のそばを流れる水路や裏道があるかいわいをあらためて歩いてみると、素朴な雰囲気に心が引かれた。今後は町中と合わせ、竹田城跡の眺望が楽しめる立雲峡を含む活用策も探りたい。
▼町の変化に注目 古屋耕三さん(65)竹田城下まち商店街代表
ビジョン会議を受け、地元では町がどう変わっていくかに注目が集まっている。観光地として「おもてなし」の気持ちを浸透させていくため、提言の中でもできることから実施し、根気強く検証していかなければ。神戸新聞社が地元住民や行政の間に立ち、進行役を務めたことで議論しやすくなり、多様な意見を引き出してくれた。
〈専門委員から〉
▼関西学院大学総合政策学部 八木康夫教授 「人と人」つなぐ働き
この会議での神戸新聞社の役割は「プレーヤー」で、出来事を報道するだけではなかった。課題に対し関係者の言い分を丁寧に聞き取り、その本質を整理し発信したのである。まさに「人と人」「人と地域」をつなぐ働きであった。
▼甲南大学経営学部 西村順二教授 夢語り合う場を提供
会議の成否は当事者意識の醸成に尽きる。地域住民、企業者、市職員が他人任せではなくわが事として考えたから夢を語り合えた。主役は彼らであり、神戸新聞社は彼らに寄り添い、一緒に夢を語り、プラットホームを提案したと言える。
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