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明延鉱山で栄えた大屋・明延地区 小水力発電実現へ奮闘 住民有志ら、電源確保や地域存続の一助に 12月にもコンサル会社が調査結果報告 費用負担など事業化へ慎重な協議続く
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 かつてスズの生産量日本一の「明延鉱山」があった養父市大屋町明延地区で、地域住民有志らが、川の水などを利用する小水力発電事業を始めようと奮闘している。得られた電力は非常用電源とするほか、電力会社に売って収益を地区の存続に役立てる。有志らは「まちの未来のために実現させたい」と話している。(吉田みなみ)

 小水力発電は、主に川や水路の水の流れを活用する。大規模な施設が不要で周囲への影響が少ないことから、環境に優しい再生可能エネルギーとして注目されている。

 明延地区は、明延鉱山の労働者と家族らで栄え、周辺には社宅や大衆浴場があった。当時は自家用水力発電所もあり、鉱山の電力の一部を担ったという。

 9月末時点の同区の住民は、高齢者施設に入居するなど実際に住んでいない人を除くと26世帯46人。うち半数余りを75歳以上の高齢者が占める。

 同地区は約15年前、台風の影響で道路が寸断され、一時孤立した。停電や断水に見舞われたといい、地区の存続と災害時の不安解消に向けた取り組みは急務となっている。

 一円電車の乗車体験会や坑道見学などを実施し、交流・関係人口の創出に努めてきたが、多くはボランティアらの協力で成り立っており、新たな収入源の確保も必要だった。

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 そこで約3年前、住民有志らが、地区内に小水力発電所を開設する計画を打ち出し、市に相談して調査に関する助成申請などをしてきた。

 2024年度は県の助成を受け、宍粟市、香美町など先進地の視察や小水力発電についての住民向け勉強会などを実施した。25年度は明延で川からの取水量などを調べ、発電機器を設置する場所の検討や先進事例の研究などを進めている。

 明延地区の住民有志と養父市、小水力発電のコンサルティング会社の3者は9月半ば、打ち合わせと現地調査に臨んだ。

 明延鉱山の近くを流れる富士野川では、多くの水が得られそうな地点を探した。川の水はかつて、鉱山の従業員らが通う大衆浴場で使われた経緯があり、住民が調査員らに歴史などを紹介する場面がみられた。今後は鉱山から流れ出る水の利用も検討するという。

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 12月ごろ、コンサル会社が地区の有志と市に調査結果を報告し、26年度以降の方針を検討する。事業化に向けては、運営主体として新たに会社や団体を立ち上げ、費用負担を決めるなど協議を重ねる必要がある。

 明延と同規模とみられる黒土川小水力発電所(宍粟市)の総工費は約8800万円だったといい、有志らは「多額の資金が必要になるのは間違いない。県や市の補助金なども活用したい」と話す。稼働までに少なくとも5年はかかるとみられる。

 明延区の小林史朗区長(67)は「未来を見据えて地域へ投資する形になる。明延を大切に思うからこそ、慎重に進めたい」と話している。

2025/10/29
 

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