記事特集
発生から17年半となる阪神・淡路大震災の被災地で、建物の復旧作業に伴うアスベスト(石綿)被害が新たに確認された。牙をむき始めた大震災の石綿禍。しかし、当時の環境庁(現・環境省)などによる石綿の飛散調査は「おおむね問題なし」との結果だった。時をへて相次ぐ中皮腫の発症は、実態把握の不十分さを浮き彫りにするとともに、東日本大震災の被災地にも暗い影を落としている。
家屋全壊約10万棟、半壊約14万棟。阪神・淡路大震災の被災地では、倒壊した建物からすさまじい量の粉じんが発生した。日本では石綿消費量の約8割が建材に使われてきた。吹き付け材、屋根材、内装材、吸音材、外装材、耐火被覆材(たいかひふくざい)などだ。震災で崩れた建物のがれきには、命を脅かす「死の棘(とげ)」が含まれていた。
当時の環境庁の調査によると、解体現場周辺で空気1リットル中の石綿繊維量は平均3~5・4本、大気汚染防止法の基準(10本)を下回った。一方、民間研究機関「環境監視研究所」(大阪市)の測定では、解体現場周辺で1リットル中160~250本が検出された。基準値をはるかに上回る。
官民でデータに隔たりがあるが、中皮腫が増えているのは「飛散防止に有効な手を打てなかったことを示している」(専門医)とみる人は多い。
解体が急ピッチで進む中、行政が現場に本格的な粉じん対策を指示したのは、発生から1カ月あまりたってからだ。復旧工事が急がれる中、石綿対策が後手に回ったことがうかがえる。
発生から間もなく1年半になる東日本大震災の被災地でも、石綿の飛散に不安が高まっている。
環境省の飛散調査では、約350地点のうち95・4%で「問題なし」との結果だった。しかし、現地調査をした森裕之・立命館大教授(公共政策)は「極めて不十分」と疑問を投げ掛ける。「建材は解体作業で細かく砕かれており、風向きによって測定値が大きく異なる。東北の被災範囲は広大で、阪神・淡路の教訓を踏まえて丁寧に測定すべきだ」と話す。
被災地ではがれきの集積場が点在している。原発事故に伴う放射能汚染に目を奪われがちだが、宮城県石巻市の石巻赤十字病院の矢内勝・呼吸器内科部長は「がれきが身近にある以上、石綿の吸引を避けるために万全を尽くす必要がある」としている。(加藤正文)
【発症時期迎え被害拡大か】
中皮腫で亡くなった宝塚市の男性=当時(65)=が阪神・淡路の復旧作業に携わったのは、わずか2カ月だった。震災アスベストの危険性を訴えてきたNPO法人ひょうご労働安全衛生センターは「十分な飛散対策がないまま、復旧解体が街中で繰り広げられた。労働者だけでなく、住民やボランティアへの被害も懸念される」と指摘する。
石綿が肺の中に入り、中皮腫や肺がんといった石綿疾患を引き起こすまでの潜伏期間は、十数年から40年とされる。阪神・淡路大震災から17年半、同センターの西山和宏事務局長(50)は「発症時期に入ったのではないか」と警戒感を強める。
近年、復旧に携わった労働者の石綿疾患が相次ぐ。2008年、解体にかかわった兵庫県内の男性の中皮腫発症が判明。その後、解体作業の現場監督を務めた芦屋市の男性、がれきを収集した明石市職員の発症が確認された。
しかし、いずれも発症と震災時の石綿飛散との明確な因果関係は証明されておらず、兵庫県の井戸敏三知事は「原因が阪神・淡路大震災だとはなかなかなりにくいのではないか」などと繰り返し発言している。
これに対し、今回の宝塚市の男性のケースでは、石綿に触れる機会が震災後の復旧作業に限定される。男性の妻(67)は「夫と同じような作業をしていた人は多いはず」との思いで、夫の病状の公表を決心した。
被害拡大や不安解消に向け、行政の速やかな対応が求められる。(中部 剛)
2012/8/24阪神・淡路まちづくり支援機構 関西広域連合と連携へ2013/1/18
南海トラフ地震に備え 県内企業が対策強化2013/1/18
阪神・淡路大震災 亡き祖父への思い募る 家業継いだ男性2013/1/17
復興へ決意新た 東日本大震災被災者、兵庫で追悼2013/1/17
亡き弟にささぐカレーライス 阪神・淡路大震災2013/1/17
スポーツ界思い新た 阪神・淡路大震災から18年2013/1/17
「支援の輪広げたい」平松愛理さん神戸でライブ2013/1/17
亡くした教え子忘れない 兵教組が追悼の夕べ2013/1/17
阪神・淡路大震災19年目 復興格差拡大に懸念2013/1/17
経験生かし東日本激励を 被災元教諭ら体験披露2013/1/17
被災地行政の問題点指摘 神戸で講演会2013/1/17
キャンパスに鎮魂の歌声響く 神戸大で追悼式典2013/1/17
釜石の児童ら神戸訪問 追悼行事など参加2013/1/17
藤本義一さんの遺志、受け継ぐ 芦屋「浜風の家」2013/1/17
福島の缶バッジ胸に ひょうごメモリアルウォーク2013/1/17
祖父母亡くした村上健太さん 銘板温め成長報告2013/1/17
「今年も会いに来たよ」 妻を亡くした細見昌一さん2013/1/17
神戸と思いを共有 東日本大震災の被災者が慰霊に2013/1/17
「もう一度会いたい」母親が行方不明 佐藤悦子さん2013/1/17
「後のこと安心してな」 妻を亡くした林哲治さん2013/1/17
語り継ぐ、誓い新た 県など「1・17のつどい」2013/1/17
あの日を忘れず、今を生きる 兵庫県内各地で追悼2013/1/17
被災地歩き防災考える メモリアルウォーク2013/1/17
「消し去ることできない」 神戸市追悼式典2013/1/17
阪神・淡路大震災18年 ささげる祈り2013/1/17
息子の志、未来へ 「竸基弘賞」の恵美子さん2013/1/17
写真と言葉で伝えたい 宮城の阿部さんが写真展 西宮 2013/1/17
教訓伝え備えよう 県民会議が「1・17安全の日宣言」2013/1/17
受け継がれる「命」 阪神・淡路大震災から18年2013/1/17
生きることが伝えること 阪神・淡路と東日本の遺族が交流2013/1/16
被災12市GDP14兆円台に 阪神・淡路大震災2013/1/16
岩手・大槌町長が兵庫県知事訪問 支援に謝意2013/1/16
「一律の方針は未定」 古屋防災担当相 借り上げ復興住宅問題2013/1/16
石積みオブジェ ライトアップ 宝塚の「生」 2013/1/16
阪神・淡路大震災 17日で丸18年 各地で追悼行事2013/1/16
兵庫へ東北から続々 復興への思い分かち合い2013/1/16
被災地人口初めて減少 阪神・淡路大震災から丸18年2013/1/16
借り上げ復興住宅で神戸市長「県と対応変わる可能性」2013/1/15
借り上げ復興住宅 居住継続を求め県、市に請願書2013/1/15
「阪神・淡路」で犠牲 長女の日記が生きるヒント2013/1/15
震災の日「17日」号外で気付いて 神戸大の新聞サークル2013/1/15
震災で両親と兄亡くした湯口さん 決意の成人式2013/1/14
写真で伝える「1.17」 慰霊祭に合わせ展示 神戸・魚崎2013/1/14
阪神・淡路復興基金事業延長へ 商業活性化支援など2013/1/14
東北の遺児と思い共有 阪神・淡路の遺児らが活動報告2013/1/13
お母さん見ていてね 震災遺児2人が手紙 神戸で集い2013/1/13
新しい「生」がお目見え 宝塚 震災からの再生を象徴2013/1/13
61人、60歳以上が9割 災害復興公営住宅の独居死2013/1/12
神戸・長田スチールパン楽団 3月、宮城で初の演奏会2013/1/12
「私の1.17」各地から 神戸新聞NEXTに投稿2013/1/12
復興住宅高齢化率、過去最高48・2% 兵庫県2013/1/12
かまどになるベンチ、高校生が作製 神戸・舞子高に設置2013/1/11
希望の灯り、東北5カ所に拡大 神戸から分灯 2013/1/11
福島出身デュオ、17日に神戸でライブ 歌で結ぶ被災地2013/1/11
震災復興、新長田駅南再開発 完了を2年延長2013/1/11
阪神・淡路の災害援護金 未返済183億円 2013/1/11
「1・17希望の灯り」分灯始まる 神戸・三宮2013/1/10
被災者癒やす「笑い」とは 西宮の高校生が進学で研究決意2013/1/10
詩と朗読と音楽の夕べ継承 昨年まで竹下景子さん出演2013/1/10
復興、防災研究の関学大・室崎教授 定年退職前に最終講義2013/1/9
商船三井ビルの耐震工事終了 優美な外観、内部で支え2013/1/9
震災犠牲者悼む 関学大で合同礼拝2013/1/9
293番目の慰霊碑 仙台市の寺に 神戸の男性が発見 2013/1/9
東北に分灯の炎神戸へ 遺族ら16、17日に交流2013/1/8
震災18年を前にNPO法人化 神戸の団体「まち・コミ」2013/1/7
阪神・淡路大震災 民間追悼行事、2年連続増加2013/1/7
震災18年の集い 神戸の藤本さんが遺族代表であいさつ2013/1/4
絆、復興… 「1・17」竹灯籠に文字入れ 神戸2013/1/4
震災障害者ら宮城へ派遣 経験や教訓伝達 兵庫県2012/12/29
大災害時、震災障害者に「相談窓口」開設 県方針2012/12/29
県の借り上げ復興住宅、入居延長へ 年齢や障害条件2012/12/29
遺族交流、支援10年 神戸のNPO法人「HANDS」2012/12/25
宝塚のオブジェ「生」、1月16日点灯 準備進む2012/12/24
慰霊と復興のモニュメント 別姓の夫婦やっと一緒に2012/12/24
阪神・淡路大震災 モニュメント銘板に11人追加 神戸2012/12/23
阪神・淡路大震災 追悼のろうそく作り始まる 神戸2012/11/17