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家族の写真を手に、基弘さんの銘板が掲げられたモニュメントを訪れた竸恵美子さん=16日午後、神戸市中央区加納町6(撮影・峰大二郎)
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家族の写真を手に、基弘さんの銘板が掲げられたモニュメントを訪れた竸恵美子さん=16日午後、神戸市中央区加納町6(撮影・峰大二郎)

家族の写真を手に、基弘さんの銘板が掲げられたモニュメントを訪れた竸恵美子さん=16日午後、神戸市中央区加納町6(撮影・峰大二郎)

家族の写真を手に、基弘さんの銘板が掲げられたモニュメントを訪れた竸恵美子さん=16日午後、神戸市中央区加納町6(撮影・峰大二郎)

 ロボット研究を志し、阪神・淡路大震災で犠牲になった神戸大大学院生竸基弘(きそい・もとひろ)さん=当時(23)=の父和巳さんが、昨年7月、71歳で亡くなった。2005年、基弘さんの名前を冠したレスキュー工学の賞が創設され、名誉委員長に就いた和巳さん。「失われた息子の命が、多くの命を救うきっかけになれば」と願い、葬儀の香典を賞に寄付するよう遺言した。震災18年を前に、16日に神戸入りした母恵美子さん(65)=名古屋市=は、夫の思いを胸に、17日も息子の住まいがあった場所やキャンパスをたどる。(小川 晶)

 11年3月11日、名古屋市立大学病院の11階、泌尿器科病棟。個室のベッドで横たわっていた和巳さんの顔がこわばった。

 テレビの画面が道路や民家をのみ込んでいく濁流を映し出す。「早く逃げろ」。うめき声のようなつぶやきが漏れる。

 「自然災害はものすごい。あらがえない」

 表情は暗く、視線は画面から離れない。予定されていた診察は、1時間ずれ込んだ。

      ◆

 「完璧でカチカチなのは駄目。ドラえもんのような愛らしいロボットを造りたい」。基弘さんの夢だった。大学院に進学した冬に、震災が襲う。下宿先の神戸市灘区の木造アパートが崩れ、下敷きになった。

 基弘さんの遺志を、恩師の松野文俊京都大教授(55)が継ぎ、05年に「竸基弘賞」を創設。和巳さんは毎年1月、息子の命日と授賞式に恵美子さんと名古屋から神戸を訪れるのが恒例だったが、11年1月に途絶える。ぼうこうにがんが見つかり、入退院を繰り返した。

 体調が戻った12年1月、2年ぶりに神戸へ。「東日本大震災もあり、授賞式出席が大きな目標だった」と恵美子さん。和巳さんは、式で「去年ほどレスキューロボットが注目された年はない」とあいさつした。

 7月16日早朝、和巳さんは亡くなった。恵美子さんは午前5時46分と記憶している。生前、手渡されたメモには「香典は竸基弘賞などに寄付するように」とあった。

      ◆

 「去年は二人だったけど、今年は一人だよ」

 今月16日午後、神戸・東遊園地の「慰霊と復興のモニュメント」を訪れた恵美子さん。基弘さんの銘板の前で手を合わせ、涙を浮かべた。

 ちょうど1年前。和巳さんが、最後にモニュメントを訪れた時のこと。東日本の被災地で松野教授らのロボットが活躍していることを伝え、こう話し掛けていたという。「人間は無力かもしれないけど、かけがえのない命を少しでも多く救うために賞はあるんだね」

2013/1/17

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