記事特集
あの日から、街は被災地になり、私たちは被災者になった。そしてそれぞれの街に、それぞれの人に、18年の歳月が流れた。風のない静かな夜明け前、人々が集う。「ろうそく、きれい」。幼い子どもの声に、張り詰めた空気がふっと緩む。1月17日午前5時46分、祈りのときが訪れる。大切な人を失った悲しみ、怒り、寂しさ。忘れることも消し去ることもできない思いを抱えたまま、漆黒の空を仰ぐ。ほおをぬぐい、灯(あか)りにそっと手を合わせる。
神戸市中央区の警備員林哲治さん(62)は毎年1月17日朝、神戸・東遊園地の「慰霊と復興のモニュメント」を訪れる。震災で妻の美保子さん=当時(42)=を亡くし、残された2人の娘を懸命に育ててきた。誇る気持ちはない。悔しさだけがこみ上げる。18年たった今も。「なぜ自分が生き残り、お前が命をなくさなあかんかったのか」。ハンカチで何度もぬぐうが、涙が止まらない。
気だてのいい妻だった。体が弱い林さんを心配し、暖かい羽毛布団を買ってきてくれた。ほほが落ちそうな手料理。娘の子育ても任せきりだった。
あの朝、美保子さんは新聞配達に出ていた。JR鷹取駅近くの自宅マンションにいた林さんと娘たちは無事だったが、美保子さんは帰ってこなかった。足取りは、配達先の全壊したアパートで途絶えていた。
震災後、林さんは勤務先の印刷工場をリストラされた。仕事を転々とし、失業保険で食いつないだ時期もあった。それでも懸命に働き、母親の昭子さん(84)の助けを借りながら、2人の娘を高校まで通わせた。
気が張っていたのか、病気がちだった体は不思議と丈夫になった。「あんたが代わりに育てなあかんって、嫁さんが支えてくれたんやろな」。震災当時、中学1年だった長女洋子さん(31)は工場で2交代勤務をこなす。小学4年だった次女智子さん(27)は医療事務の資格試験に合格した。
2年前の春、洋子さんが作った酢豚を食べて驚いた。美保子さんの味だった。思わず声を掛けると、洋子さんが「小さいころ、そばで見ていたから」とほほ笑んだ。
震災18年の朝、涙にむせびながらようやく妻に伝えた。「2人とも自分の道を歩いている。後のことは安心してな」
(小川 晶)
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