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【特集】神戸・東須磨小 教員間暴行

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教師という仕事の重みについて語る梶田叡一氏=大阪府堺市、桃山学院教育大学
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教師という仕事の重みについて語る梶田叡一氏=大阪府堺市、桃山学院教育大学
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 神戸市立東須磨小学校の教員間暴行・暴言問題は、加害者の4人が2月末に市教育委員会の懲戒処分を、3月末に神戸地検による起訴猶予処分を受け、一つの区切りを迎えた。いじめをなくすよう教えるべき教員が同僚をいじめていたこの問題を、教員養成の専門家はどう見つめてきたのか。兵庫教育大学長や文部科学省中央教育審議会委員を歴任した梶田叡一・桃山学院教育大学長(心理学・教育研究)に話を聞いた。(聞き手・霍見真一郎)

 -教師とは?

 「教師というのは『信なくば立たず』なんですよ。周りから信頼されなければやれない仕事です。小学校や中学校で教えている内容は、復習すれば教えられます。それよりも、存在そのものとして子どもの模範になることが重要。背中でも教えなければいけない立場なのです。教師という道を選んだ限り、常に自分の一挙一動は子どもに見られていて、良い影響、悪い影響を及ぼすということを肝に銘じなければなりません」

 「教師に限りませんが、自分の視点とは別に、相手側に立った視点と周囲から見た視点の複眼的思考が必要です。相手の視点とは『自分の行為を受け入れているように見えるが本当はどうだろうか』と考える想像力。周囲からの視点とは、『自分の行為が世の中にどう映るだろうか』と客観視する目のことです」

 「東須磨小の問題では、加害者の教員には自分の視点しかありませんでした。被害者の教員はハラスメントを受けた際、泣いて抵抗するような様子もなかったと聞いています。加害教員はこれなら許されると誤解したのかもしれません」

 -自浄作用が課題だ

 「保護者の間で加害教員を評価する声もあるようですが、疑問を抱きます。そもそも常に高い倫理性を意識して学び続けている人はあんな野放図にはなれないですし、自分を甘やかす自己全能感も出てこない。加害教員はからかっていたつもりかもしれませんが、自分をいさめるもう1人の自分は育っていなかった。教員養成の仕方から反省しなければいけないと思います」

 「教師は拍手を浴びる場面だけでなく、必ず批判もある仕事。学級王国を作って好き勝手にするのではなく、教員同士で戒め合い、支え合っていくことが欠かせない。教師の道を選ぶということは、どういう場であっても自分を律しなければならないと覚悟することでもあります。その自覚を持たせるように教師を育てないといけない」

 -神戸市教育委員会の対策についてどう考える?

 「今回の問題で、東須磨小にとどまらず、途方に暮れている教師は大勢いると思います。神戸市教委が、弁護士や臨床心理士などを『専門官』として、校長OBを『地区統括官』として招き入れ、学校をサポートする方針は応急措置としては理解できます。ただ、鼻綱を持ってあれもこれもと号令をかけたからと言って、いい学校ができるとは思いません。強権の下で秩序を保つことは教育にふさわしくないからです」

 「教育というのは、自由で民主主義的であるべき。例えば、授業で教師の予想と全く違うことを発表する子どもがどんどん現れないと社会は前に進みません。待っている答えと違うことが子どもたちから出てきたら、普通は嫌な気分になるもの。でも、教師はそんな発言を喜べるよう、自分自身を育てなければいけません」

 「教師集団が育つには、一人一人が自分を律する心を育て、互いにおもんぱかることが必要。そういった学校や社会をつくっていくには手間暇が掛かります。そして、その道を考えていくことが、まさに教育だと思っています」

【かじた・えいいち】1941年、島根県出身。京都大学文学部哲学科卒(心理学専攻)。大阪大教授、京都大教授などを経て2004年12月から10年3月まで兵庫教育大学長。文科省中教審教育課程部会長を務めた際、学習指導要領の改定に中心的に関わった。18年4月から現職。

【東須磨小教員間暴行・暴言問題】神戸市立東須磨小の30~40代の教員4人が、20代の若手教員に暴行や暴言、セクハラを繰り返していたことが発覚。被害教員は療養を余儀なくされ、須磨署に被害届を出した。神戸市は加害教員4人の給与差し止めを念頭に条例を改正し、同市教育委員会は2019年10月、諮問した審査会の異論に反してこの4人を分限休職処分とした。市教委が設置した弁護士による調査委員会は20年2月に事実関係や背景をまとめた報告書を公表しその後、市教委は2人を免職にする4人の懲戒処分を発表。兵庫県警は3月に暴行と強要の疑いで4人を書類送検し、神戸地検は同27日、4人を起訴猶予処分とした。

2020/4/5

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