最近は40代、50代でも料理をしたことのない人が増え、食育の必要性を痛感しています。体をつくり、心をつくる食は人間が生きる基本です。
健康長寿を目指す上で日本の食文化は適しています。長所は「旬(しゅん)」の物を生かすこと。元気な体をつくる知恵が詰まっています。年齢を重ねると「味蕾(みらい)」という舌の組織が減って味を感じにくくなりますが、かつお節や昆布でしっかりだしを取ることで補え、減塩にもなります。高塩分の食事は怖い高血圧の原因になります。
調理することも体にいい。何を作るか、どの材料をどれだけ使うか、値段はどのくらいか、どう調理するかなど、たくさん考えます。包丁や火を使うのも脳を活性化します。独りになると調理がおっくうになりがちですが、外食してもいいので、後で同じ料理を作ってみたらどうでしょう。
最近は歯がない人も食べられる軟らかい食事が販売されています。でも、できるだけ家族と同じ食事を取ってほしい。小ぶりに切って、切り込みを入れれば食べられる。介護介助でそういうサービスができないでしょうか。自分でかんで食べることは、介護予防の点でとても大切です。
できれば朝ご飯もきちんと食べてほしい。ご飯と少しのタンパク質で体が動きだします。逆に夜9時以降は食べない方がいい。胃を空っぽにすることは重要です。
ご飯などの糖質を控える減量法がはやりですが、何か代わりのエネルギーが必要です。かといって、ご飯代わりに酒ばかり飲むような生活はよくない。更年期を過ぎた女性はカルシウムが不足して骨粗しょう症になりがちなので特に注意が必要です。
肉も適度に食べた方が運動機能の低下を防げます。やせた人よりちょっと太めが長生きというデータもあります。いろんな食材をバランスよく取って「一汁一菜」ならぬ「一汁三菜」を目指しましょう。(聞き手・田中伸明、協力・兵庫県予防医学協会)
【ふかざわ・ゆずる】1956年、神戸市中央区生まれ。兵庫栄養調理製菓専門学校栄養士科、調理師科卒業。食文化や食材を各国で調査し、食育を普及している。同市須磨区在住。
食育インストラクター
NPO日本食育インストラクター協会は、食育を生活に生かし、社会に普及・活躍できる指導者の資格を5段階で認定。兵庫栄養調理製菓専門学校(西宮市)調理師科では3級を取得できる。