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長寿の作法
医療や福祉現場で活躍する人々が、健康寿命を延ばす工夫を紹介します。
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田場隆介さん
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田場隆介さん
介護予防に向け、適度な運動で体力をつける人たち=三田市駅前町、介護予防センター「墾(ひらく)」
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介護予防に向け、適度な運動で体力をつける人たち=三田市駅前町、介護予防センター「墾(ひらく)」

 小児科医として日々、心身ともに発達する子どもたちを見ています。発達は大人になれば止まるわけではありません。皮膚が新陳代謝するように体中では新たな細胞ができ、入れ替わり続けています。

 発達には適度な運動が必要です。運動で筋肉(骨格筋)を動かすと、心臓は活発に働き、肺への血流は増え、末端の血管が広がります。人は食事で取った糖質や脂質、タンパク質を基に、酸素を使って主なエネルギーを作ります。運動が適度であれば、酸素が体中に運ばれ、細胞が活性化して体に力がみなぎってきます。自律神経が安定する効果もあります。

 運動と呼吸や心臓の関係を理解するための「ワッサーマンの歯車」という概念があります。骨格筋、心臓、肺を三つの歯車に見立てます。運動すると、酸素は肺から吸入され、心臓は酸素を含んだより多くの血液を送り出し、全身の骨格筋に届けられます。酸素を受け取った細胞は、ミトコンドリアで生活に必要なエネルギーを生産していきます。

 一連の能力は「運動耐容能」といい、全身の健康度といえます。年齢とともに低下はしますが、この能力を保てば、病気やけがで手術をしても回復までの時間も短くできます。しかし、重いバーベルを持ち上げるような無酸素運動では、エネルギーを作る効率も下がります。過度な運動も余分な活性酸素を生んで、老化やさまざまな病気を招いてしまいます。

 適度な運動は、話しながらできる程度が良いとされます。健康であれば、落ち着いた時の1分間の心拍数や年齢を「カルボーネンの式」に当てはめ、適度な運動を知ることができます。ですが持病があると、運動で心筋梗塞を起こすこともあり、この式を使うのは避けるべきです。

 年を取ると、心肺や骨格筋の機能が低下します。高齢者は、軽い筋肉トレーニングで、低下した運動耐容能を少しずつ高めていきます。腕や脚を4秒かけて曲げ、伸ばすのも3秒。無理はせず、ゆっくりと8~15回、週2回から始めるのがいいでしょう。

 一方で、運動や新たなことを始めるには、状況に合わせて自らを変えていく、柔軟な価値観を持つことが必要です。柔軟な価値観は、健康な心身の証しです。仕事で得た地位など、さまざまな執着から離れていきましょう。子どもも、高齢者も発達します。生涯発達で健康長寿を目指しましょう。(聞き手・山路 進、協力・兵庫県予防医学協会)

【たば・りゅうすけ】1972年三田市生まれ。岩手医科大医学部卒。小児科医。神戸市立医療センター中央市民病院などを経て、2009年から医院や児童発達支援、高齢者介護事業所を展開する医療法人社団青山会理事長。三田市在住。

田場さんが勧める三つの作法

一、適度な運動を毎日続け、運動耐容能を保つ

一、新たなことに取り組める柔軟な価値観を持つ

一、過去に執着せず、生涯発達を心掛ける

カルボーネンの式

 (220-年齢-安静時心拍数)×運動強度+安静時心拍数=適度な運動時の目標心拍数。運動強度は、高齢者0.4▽中高年0.5~0.6▽若者0.5~0.7。心拍数が超過していれば運動を減らす。健康な人の目安で個人差があり、心臓などに持病がある場合も当てはまらない。

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