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長寿の作法
医療や福祉現場で活躍する人々が、健康寿命を延ばす工夫を紹介します。
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上り浜誠一さん
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上り浜誠一さん
上り浜さんの指導で、太極拳に取り組む人たち=神戸市中央区下山手通2
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上り浜さんの指導で、太極拳に取り組む人たち=神戸市中央区下山手通2

 太極拳は、ゆっくりと円を描くような動きが特徴です。いまは健康法として多くの人に親しまれていますが、もともとは武術でした。

 なぜ、武術が健康法になったのか。武術は、ふつう「より速く、より強く」を求めます。けれども太極拳の背景にある道教には「強くたくましいのではなく、柔らかくしなやかなのが『道』を知った人間のあり方である」との考えがあります。スピードやパワーに頼らず、柔軟な動きによって強さや速さが生まれる-という、一見、矛盾するような発想が太極拳にはあるのです。現代的にいえば「省エネ」でしょうか。太極拳と健康法には、根本のところで親和性があるのです。

 太極拳の動きは「大河滔々(とうとう)」など大自然のゆったりとしたイメージで表されます。こうした動きが、科学的、医学的にも理にかなっているという研究が示されています。

 まず肉体面では、ゆっくり動くことで普段使わない筋肉、関節をしっかり使うことができます。また太極拳の特徴の一つである中腰の姿勢は、下半身を集中的に鍛えるのに効果的です。片足で体を支える動きは平衡感覚を養い、転倒防止が図れます。

 トレーニング効果が高い一方で、息が上がるような運動ではありません。もちろん医師の判断が必要ですが、心臓や呼吸器系に問題があり、激しい運動が難しい人も取り組みやすいというメリットがあります。

 精神面でもよい効果が期待できます。現代は感覚的にも心理的にも刺激の多い環境にあり、交感神経が常に活発な状態といえます。一方で、リラックスしているときに活性化する副交感神経は、働きが弱まりがちです。太極拳のゆっくりした動きと深い呼吸は副交感神経の働きを高めるとされ、自律神経のバランスを安定させます。

 私が指導する教室に通う中には、80歳を超えた人も多いですが、皆さん元気です。長年続けていると、同年代に比べて体の動きに差が出るようです。

 太極拳と長く付き合うこつは「頑張らないこと」。年齢とともに体力は衰えます。できていたパフォーマンスが難しくなるときが来ます。「以前と同じように」と頑張ると、無理が出てしまいます。自分を知り、自分を受け入れること。それこそが太極拳の考え方でもあります。(聞き手・武藤邦生、協力・兵庫県予防医学協会)

【あがりはま・せいいち】1958年神戸市出身。関西学院大卒。87年、神戸太極拳協会理事長。88~89年、中国・天津市南開大で太極拳などを研究。神戸市の各区民センター、神戸新聞文化センターなどで指導。神戸市中央区在住。

上り浜さんが勧める三つの作法

一、太極拳の緩やかな動きで、心も体も若々しく

一、いまの自分の限界を知り、受け入れる

一、無理をせず、10年、20年と長く続ける

太極拳

 300年ほど前に、中国で武術として誕生。現代では、健康法として幅広い世代に親しまれているほか、競技スポーツとしても取り組まれている。ゆっくりとした呼吸と動きが体を鍛え、自律神経のバランスを整えるとされる。

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