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長寿の作法
医療や福祉現場で活躍する人々が、健康寿命を延ばす工夫を紹介します。
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室生卓さん
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室生卓さん
健康長寿のためには定期的に検査を受け、早めに治療を受けることも重要だ=神戸市西区枝吉1、みどり病院
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健康長寿のためには定期的に検査を受け、早めに治療を受けることも重要だ=神戸市西区枝吉1、みどり病院

 心臓の怖い病気に「心臓弁膜症」があります。心臓の弁が障害を起こし、心不全に至る疾患で、その中で最も多い大動脈弁狭窄症(きょうさくしょう)は高齢社会の進展に伴って急増しています。重症の大動脈弁狭窄症で手術しない場合、5年後の生存率は約3割。がんより死亡率は高いのです。

 弁膜症は、発症後の経過が悪いことで突然死することもあります。いわゆる「ぽっくり病」ともいえます。

 ある弁膜症患者の男性が、この話を聞いて「この病気で死にたい」とおっしゃいました。聡明(そうめい)な方でよく考えての判断でしょうから、意思を尊重して手術は見送りました。

 3カ月おきに通院してもらいましたが、男性は体調がだんだん悪化し、息切れや動悸(どうき)が強くなってきた。しかも「今晩が最後かな」と毎日考えるうちに、死への不安でノイローゼ気味になったそうです。「苦しまずに死ぬ」という理想とはほど遠い状況でした。

 そこで、私が手術を勧めると、男性は笑顔になって「やってもらえませんか」とおっしゃいました。弁膜症は案の定、重症化していましたが、手術が間に合って男性は元気を取り戻しました。

 弁膜症の手術は、悪くなった弁を人工弁に置き換える方法が主流です。血流を止めて行う大手術ですから命がけですし、手術後のリハビリテーションもつらい内容です。

 しかし、山登りでもゲートボールでも、治してこれをやりたいという目標を持って治療に臨めば、多くの人が乗り越えられます。

 実際、弁膜症の手術を受けた患者さんが、5年後に生存している割合は85%に上ります。そして多くの人が平均寿命を全うしています。

 病気を治したい、良い人生を送りたい、という意欲を持って行動することが、健康長寿の必要条件ではないでしょうか。私たち医療者は、患者さんの思いを全面的にサポートしたいと考えています。(聞き手・田中伸明、協力・兵庫県予防医学協会)

【むろう・たかし】1960年名古屋市生まれ。三重大医学部卒。大阪市立大病院などを経て、2012年にみどり病院院長。循環器専門医。芦屋市在住。

心臓弁膜症

 心臓には血液の逆流を防ぐため四つの弁があるが、この弁が障害を起こす病気。狭窄(きょうさく)症と閉鎖不全症の2種類があり、「心房細動」という不整脈を併発することも多い。

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