記事特集
地震、水害、早く避難を! でも高齢者や障害者らの中には、逃げることが難しい人がいる。大分県別府市の防災推進専門員、村野淳子さん(56)は、普段から高齢者や障害者と接している福祉の専門職が地域住民と共に、命と暮らしを守る方法を考えておく「災害時ケアプラン」を広げようと奔走する。兵庫県でも丹波篠山市や播磨町などで同様の試みが続く。きょう9月1日は「防災の日」。一緒に考えてみませんか。(新開真理)
-「災害時ケアプラン」について教えてください。
「高齢者や障害者ら手助けが必要な人が安心して避難するための計画で、ケアマネジャーや相談支援専門員ら、本人をよく知る福祉の専門職が作ります。まず本人や家族から不安な点を聞き取り、普段の生活や障害の特性などと共に地域住民らに伝え、意見交換します。長く歩くのが難しい人に、自治会がリヤカーの使用を提案したことも。そして、実際に避難訓練をしてプランを検証します」
「国は東日本大震災を受け、支援が必要な人の『個別計画』を地域で作るよう勧めている。ところが、別府市内で車いすで暮らす31歳男性の事例を調べてみると、民生委員は65歳以上の住民の名簿しか持っておらず、自治会長らも男性の名前と住所、連絡先を知っているくらいでした。しかし、日常的に支援に当たる専門職は必要な手助けや配慮、道具や物資を把握していて、難なくプランが作れる。これなら全ての情報を地域の人に開示する必要もありません」
-取り組みは2016年度に始まりました。熊本地震の年です。
「別府市は震度6弱でした。これまでに、個人情報の共有に同意する約3千人の中から44人分を作成した。本年度は、浸水被害が想定される地域の11自治会から一番心配な人を1人ずつ挙げてもらい、プランを作る予定です。障害者らを受け入れる福祉避難所の態勢強化も同時進行しています」
「全国共通の制度にしたいと考えていて、国の関係省庁との勉強会が動きだしました。丹波篠山市の担当者らも入っています。プラン作成を起点に、福祉職の善意で何とか支えられている現状の改善につなげていきたい」
-挑戦が続きますね。
「最初の避難訓練で、高台に向かう車いすをうまく引っ張れない場面があったんですが、次の年になると、地域の人が違う道具を用意して待っていてくれた。漁師さんから緩まないロープの結び方も教わっていた。また、精神障害のある50代の男性は訓練に参加し、事前に準備すれば車いすを押すなどの手伝いはできると感じたといい、コンビニで住民と言葉を交わすようになりました。私は今の業務を仕事だとあんまり思ってなくて、障害者の、というより、友達の困り事をどうすれば解消できるか、という感じでやってます」
-なぜ別府市で?
「夫の転勤で大分に来て、県社会福祉協議会(社協)で15年間、勤務するうちに、別府市には働きながら地域で暮らす障害者が多いことが分かった。高齢化率は34%と高く、留学生も多い。そうした中、南海トラフ地震や由布岳の噴火災害に備えなければならない。県内で最も課題が大きい別府でできれば、よそでもできると考えました。一方、14年施行の『障害のある人もない人も安心して安全に暮らせる条例』で、防災時を含めた『合理的配慮』を全国で初めて明記するなどの積み重ねもあります。市から声が掛かって、16年1月に市職員になりました」
-「みんなが助かる」防災を掲げています。広げるには?
「これは地域から出てきた言葉なんです。みんなが納得できて、地域事情に合った形にするため、会合や訓練の前には何度も足を運びます。障害者の中には意思疎通が難しい人もいるので、当初は『そういう人についても地域がやらんといかんのか』という異論も出た。『無理なら別の形を考えます。まずは一回、やってみてください』と呼び掛けました。災害は赤ちゃんからお年寄りまで、みんなの課題。応援してくれる仲間を増やせる人を育てていきたいです」
【むらの・じゅんこ】 1963年東京都生まれ。大分県社協を経て2016年から現職。国の中央防災会議・防災対策実行会議委員。阪神・淡路大震災で活動したボランティアらに「すごく教えてもらった」。
■記者のひとこと
求職中のパソコン研修が縁で大分県社協に出合い、「データ入力の仕事だと思って入った」ら、災害時ボランティアの研修の講師を任されたという。「えっ、災害?」から20年近く。笑顔で全国を飛び回る。
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