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佐藤さんの思いを受け継いだソース(手前)への思いを語る道満雅彦社長=神戸市中央区港島南町3、オリバーソース(撮影・斎藤雅志)
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佐藤さんの思いを受け継いだソース(手前)への思いを語る道満雅彦社長=神戸市中央区港島南町3、オリバーソース(撮影・斎藤雅志)

 阪神・淡路大震災で社屋が焼失したオリバーソース(神戸市中央区)が毎年1月17日、震災で亡くなった男性社員にちなんだソースをつくっている。男性が直前に仕込んだ原液が被災を免れ、震災10年、15年、20年の節目に限定販売。原液を使い切った今は当時のレシピを改良し、最高級のソースを炊く日として定着する。道満(どうまん)雅彦社長(67)は「この日がある限り、鎮魂の気持ちと被災の歴史が忘れられることはない」と話す。(竹本拓也)

 看板商品「どろソース」で知られる同社は1923(大正12)年、神戸市兵庫区松本通で創業した。95年の震災では、直前に完成したソースの研究棟や社屋などが焼けた。94年末に、単月売り上げが過去最高を記録したばかりだった。

 製造担当の佐藤也寸志(やすし)さん=当時(41)=がソースを仕込んだのは震災4日前の1月13日。連休明けの17日は別のソースを作ろうと通常よりも早く自宅を出発し、直後に倒壊した建物の下敷きとなった。道満社長を含め「社内に3人だけ」という、秘伝のレシピを知る貴重な存在だった。

 製造ラインを失い、取引先が激減するなど創業以来最大の窮地に立たされた同社は97年、再起を期して神戸・ポートアイランドに移転。そのときも、奇跡的に焼け残った5トンのソースはタンクごと大切に運び込まれた。「一滴も無駄にしないという思いをみんなが持っていた」と道満社長。原液は密閉状態で保存され、衛生管理も万全だった。

 10年間の熟成を経て、2005年に「クライマックス」と名付けて限定販売した。シリアルナンバーの第1号は佐藤さんの遺族に贈られた。震災15年に続き、20年の節目には最後の原液を使って3千セットを準備。発売後わずか8分で完売した。

 廃業の危機から立ち直り、街も一定の復興を果たしたその頃、道満社長は一つの決意を固めた。「(被災を)言い訳にせず、ソースで勝負したい」。そんな思いが募り、全商品から「神戸」の文字を外した。

 一方で、実直に仕事に打ち込み、会社を支えてくれた佐藤さんを忘れたことはない。だから毎年の「1・17」には、当時のレシピを改良したソースを仕込む。原料となる香辛料や野菜の品質にこだわり、3年寝かせる最高級品。この商品だけは、ラベルに「鎮魂を込めて毎年1月17日に仕込み…」と記す。

 震災後に入った社員は今や8割に達する。道満社長は「1月17日に炊くのを社の恒例とすることで、たとえ震災を直接体験していない社員が増えても『あの日』がいつまでも語り継がれるはず」と語る。

 17日には2トンを仕込む予定で、3年後の1月17日に販売する。同社のホームページで現在購入できるのは16年1月17日に仕込んだ商品で、ウスター、どろ、とんかつの3種類。350ミリリットル入りで、ウスターととんかつは各600円、どろは700円。3本セットは2千円。同社TEL078・306・6300

2020/1/15

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