記事特集
阪神・淡路大震災当時、神戸市長田区に応援職員として入った大阪府豊中市の消防士と熊本市の保健師が、それぞれの地元で防災力の向上や教訓の継承に尽力している。あれから間もなく25年。「人のつながりが希望」「被災者一人一人に寄り添うことが大切」。東日本大震災の被災地でも活動したベテラン2人は、今も阪神・淡路を原点に据えている。
■豊中から派遣、懸命に消火
大阪府豊中市消防局長の小倉博さん(53)は阪神・淡路の発生当日に消防士として長田区に派遣され、消火活動に当たった。東日本大震災でも岩手県大槌町に出向して新たな防災計画の立案に協力。二つの震災を経験し、人とのつながりを強めれば災害に強い地域をつくり出せると学んだ。
25年前、駆け付けた長田区では住宅地を猛火が襲い、戦争映画の焼け野原のような光景が広がっていた。川からホースで水を引き、がれきの中でくすぶる火を消して回った。
夜まで作業を続けていると、学校に避難した人たちに呼ばれた。そこで渡されたのはおにぎりとさゆ。断ろうとしても「あんたらが頑張ってくれなあかんやん」と強く勧められた。人々がたき火を囲んで今後を話し合う姿もあった。
現地滞在は丸1日にも満たなかったが、「被災しても助け合う人間の強さを感じた」と話す。
豊中市の危機管理担当部署で勤務していた2013年4月から5カ月間は大槌町に出向した。11年の東日本大震災で津波被害に遭い、災害関連死も含め1286人が犠牲になった町。大勢の人が仮設住宅で暮らしていた。主な業務は被災状況の聞き取り調査。新たな防災計画の下地を作った。
調査すると、住民は近所付き合いの中で「あの人はこの時間に病院に通っている」「自宅ではどこの部屋に寝ている」とお互いに把握していることが分かってきた。この情報は津波からの避難誘導にも生きたという。
豊中市に戻ってから学校や自治体を対象に計70回ほど出前講座を実施。「日頃からのコミュニケーションが災害対策にもつながる」と説いた。
ボランティアとして被災地に出向くことも。11年の紀伊半島豪雨では和歌山県那智勝浦町へ。汗をかいて復旧作業をするだけでなく、話を聞くと住民が喜んでくれると知った。数々の経験を経た今は「人のつながりが被災者の希望になる」と信じている。
■熊本から応援、避難者ケア
熊本市健康づくり推進課副課長の保健師永野智子さん(58)は阪神・淡路で初めて被災地支援を経験し、避難所での衛生管理や健康管理を担った。学んだのは、刻一刻と変化する状況を捉え、被災者の声に耳を傾けること。教訓は2016年の熊本地震で生きた。定年退職を前に後進を育てようと奔走する。
阪神・淡路発生の約2カ月後、永野さんは約760人が身を寄せる長田区の中学校に5日間派遣された。「災害対応の研修はなかった時代。先発隊から毎日送られてくる活動記録が頼りだった」。そこには、けがや体調不良の人への対応が減る一方、心のケアの必要性が増していると記されていた。
着いてすぐ教室を回った。「周囲になじめず、孤立する被災者が目についた」と永野さん。じっくり話を聞いて信頼関係を築くことに時間を割いた。生活の見通しが立たない不安を打ち明けてくれる在日外国人や、かたくなに拒否していた入浴を「永野さんの付き添いなら」と了承してくれる高齢者がいた。
経験を買われ04年の新潟県中越地震では同県小千谷市に、11年の東日本大震災では宮城県南三陸町に派遣された。そして、16年4月。地元で熊本地震が発生した。
担当地域の統括役を任された永野さん。被害の全容をつかもうと、50カ所以上の避難所の巡回を指示した。車中泊が多いと分かり、エコノミークラス症候群の危険を察知。予防のために避難者と一緒に体操し、啓発のチラシを配った。
支援態勢が手厚い福祉避難所があっても「家の片付けに通いたい」と自宅近くの避難所を選ぶ高齢者も多かった。そこで、体が不自由な高齢者が一般の避難所でも楽に眠れるように、ニュースで見た段ボールベッドを取り寄せた。
永野さんは「一人一人がアンテナを張って被災者の要望に耳を傾ける。その情報を共有することが大切」と訴える。
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