記事特集
阪神・淡路大震災から25年を前に、ようやく再開発事業完了の見通しが立った新長田駅南地区(神戸市長田区)。神戸市は高度成長期の都市開発手法をなぞるようにハード整備を優先して早期復興を目指したが、商店街などにかつての活気は戻らず、この間、批判を浴び続けた。人口減少や少子高齢化、経済情勢の変化などにさらされる中で、今も大きな課題を抱えたままだ。
1月上旬の夕刻、新年を迎えた大正筋商店街を行き交う買い物客はまばらだった。商店主は「震災で街は変わり、ネットで買い物をする人も増えた。にぎわいは戻らず、商売は難しくなるばかり」とこぼした。
かつて商店街や工場、木造住宅が密集していた同地区は、震災で壊滅状態に。復興を急ぐ市は、わずか2カ月後の1995年3月17日に都市計画を決定した。被害範囲が広く、事業対象も20・1ヘクタールと広大に。市西部の「副都心」として住居や商業スペースを再配置するとした。
戦後ポートアイランドや六甲アイランド、ニュータウンの大規模開発を次々手掛けた神戸市。「拙速」と批判を受けながらも打ち出した新長田再開発は、人口増や商業床の需要増による地価上昇を前提としたが、時代は既にバブル崩壊後の低成長期に突入していた。
市は当初、全ての再開発ビルを自ら建設し、商業床を売却して事業費を賄う狙いだった。だが地権者は約1600人にも上り、買収交渉は難航した。再開発ビルでは市が、従来の商店主らへの賃貸を認めなかったため、多くがローンで床を購入せざるを得なかった。
市も床の売れ行きの悪さから多額の負債を抱え、2008年度以降は再開発ビル建設を民間事業者に委ねた。ただ駅からの距離などで民間が関心を示さない土地もあり、その後も建設は思うように進まなかった。
計画された全44棟のうち市が建てた23棟では、震災前とほぼ同規模の約5万2千平方メートルの商業床が整備された。19年末時点で9割が利用されているものの、市が売却できたのは4割。元市幹部の高寄(たかよせ)昇三・甲南大名誉教授(85)は「建設先行型の神戸市は建物を造るのを重視し、街のにぎわいにどうつなげるかの戦略がなかった」と指摘する。
高層のマンション整備により居住人口は約6千人と、震災前の約1・4倍に増えた一方で、約5千人だった昼間人口は3200人(06年度)と戻っていない。昨年6月には昼間人口増を目指し、兵庫県と神戸市が計約90億円を投じた「新長田合同庁舎」(同市長田区二葉町5)が完成。職員約千人が勤務し、年間約30万人の来庁者を見込む。
市は県立総合衛生学院の移転も含めた効果で、昼間人口も震災前の水準に回復するとみるが、成果が見えるのはまだ先になりそうだ。大正筋商店街振興組合の今井嘉昭理事長(77)は「合同庁舎の完成後は人通りも増えた。新たな経済効果に期待したい」とする。(石沢菜々子、上杉順子)
【しっかり検証すべき 兵庫県震災復興研究センターの出口俊一事務局長(71)の話】再開発の手法に「大規模すぎて時間がかかる」と反対したが、市は規模にこだわった。市は今回、震災25年という節目で事業を終わらせたかったのだろう。
震災前から市には長田を西の副都心として再整備する計画があった。右肩上がりの時代に作った計画だが、千載一遇の機会とばかりにそのまま走った。人口減や高齢化などの現状を踏まえておらず、長田の再開発は「復興災害」だ。商売を続けるため権利床を買わざるを得なかった人たちは、今も高い管理費などに悪戦苦闘している。市は事業費も明らかにしてこなかったが、しっかり検証すべきだ。
【使いこなす手法必要 都市計画に詳しい安田丑作(ちゅうさく)・神戸大名誉教授(74)の話】震災前は木造住宅が密集し土地や権利が細分化していたのを公共の主導で解きほぐすため、市は再開発という手段を選んだ。25年かかったが大仕事であり、最初から見てきた者として完了は感慨深い。
従前の居住者用の住宅を優先して建てるなど、戻って住むことを可能にした。一方、この四半世紀はネットの発達など、商業環境の変化の加速に重なる。居住人口が戻っても地元で買い物する人は減り、にぎわいを取り戻すのは難しいが、県市の合同庁舎の開庁や県立総合衛生学院の移転は評価できる。器はしっかりしてきたので、それを使いこなす手法が今後必要だ。
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