記事特集
19歳のとき、交通事故で首の骨を折り、四肢に障害が残った神戸市長田区の浜野健二さん(43)が、2020年の東京パラリンピックに向けて車いすラグビーの普及に力を注いでいる。かつて日本代表にも選ばれた情熱の原点は、事故の翌年に遭遇した阪神・淡路大震災。「死ぬことばかり考えていたけど、絶対生きなあかん」。多くの命が失われたあの日、前を向くことを心に誓った。(上田勇紀)
大学入学直後の1994年4月下旬。ピザ店のアルバイト中、ミニバイクで軽トラックと衝突した。「テレビの画面が消えるみたいに」記憶が途絶え、病院の集中治療室で目覚めた。首から下の感覚がなかった。
手足も上半身も動かせない。「もう、治らへん。サッカーもでけへん」。小学3年からサッカーに夢中だった。中学では神戸市選抜の最終選考に残った。高校では一時競技を離れたが、大学でまた始めようと決めた直後の事故だった。
病室のカーテンを締め切り、誰とも口をきかない日が続いた。相部屋の患者が次々に退院していく中、「ただ死にたかった」。4カ月後、リハビリ病院に移ってからも常に「死」が頭にあった。
そして翌年の1月17日。前日の夜に、JR新長田駅北側の自宅から神戸市西区の病院に戻ったばかりだった。その自宅は激震後の猛火で全焼。両親と兄は無事だったが、祖父ががれきの下敷きになった。祖父は火の手が迫る中、間一髪で助け出されたという。
生まれ育った街は壊滅的な被害を受けた。小学校の同級生が犠牲になったとも聞いた。「たくさんの人が、まだ生きたいのに亡くなった。自分から死にたいなんて、絶対に言うたらあかん」。胸に刻み込んだ。
寝返りの練習など懸命にリハビリを重ねた。手首の力を使って車いすを動かせるようになり、障害者向けラグビーの存在を知った。「当たってなんぼの、激しいぶつかり合いが面白い。何より、四肢に障害があっても世界を目指せた」。サッカーを始めたころのようにのめり込んだ。
めきめき頭角を現し、2004~08年には日本代表に選出。パラリンピック出場は逃したが、南アフリカや豪州などの試合で海外選手とも渡り合った。40歳を超えた今も、関西が拠点のチーム「HEAT(ヒート)」で活躍し、昨年末の日本選手権にも出場した。
車いすラグビーを広く知ってもらう絶好の機会が2年後に訪れる。障害者の自立生活を支援する同市兵庫区の団体で働きながら、競技紹介の催しにも積極的に顔を出す。「東京パラ大会を前に、まちづくりにもっと障害者の声を反映し、ハード面も心の中もバリアフリー化が進んでほしい」。言葉に力がこもった。
【車いすラグビー】四肢に障害のある人たちができる団体スポーツとしてカナダで考案された。4人対4人で対戦し、ボールをパスしたり、ひざの上に置いたりしてゴールまで運ぶ。ぶつかり合う激しさから、かつてはマーダーボール(殺人球技)とも呼ばれた。選手には障害の程度で定められた持ち点があり、4人の合計点が一定以下になるようチーム編成する。パラリンピックでは2000年のシドニー大会から正式競技となり、16年のリオデジャネイロ大会で日本は銅メダルを獲得した。
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