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被災地で泥かきに取り組む和田山高生徒ら=福岡県朝倉市(同校提供)
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被災地で泥かきに取り組む和田山高生徒ら=福岡県朝倉市(同校提供)

 神戸新聞社は2015年1月、阪神・淡路大震災の教訓と経験を、次世代と国内外に発信する「6つの提言」を発表した。災害への備えを〈守り〉と捉えず、社会の在り方を見直し、暮らし方、生き方を創造する〈攻め〉の契機とするよう求める内容だ。提言に基づき、被災地の現状と課題を2回にわたって検証する。

■市民主体の復興の仕組みを確立する ボランティア重要性増す

 被災地の復興は市民が主体となって手掛けていくべきだ。この考え方は阪神・淡路大震災後の東日本大震災や熊本地震の被災地でも主流となっている。

 阪神・淡路では、早く市民生活を再建するため、行政主導の再開発やまちづくりが進められた。だが、住民との意思疎通が十分とは言えない状況も生まれた。

 議論を重ねてきたが、23年を経て今なお課題は形を変え、残る。少子高齢化や東京一極集中など新たな課題も加わり、解決への道のりは容易ではない。

 復興の目標は日常を早く取り戻すことだけでなく、より豊かな暮らしを目指し、模索できる環境を整え、実現させていくことだ。

 それには被災者に寄り添う人たちの力が欠かせない。2013年には改正された災害対策基本法に国や自治体とボランティアとの連携推進が記されるようになり、地域で多彩な活動を展開するNPO法人やボランティアグループの存在は、重要性を増している。

 内閣府によると、全国で認証されているNPO法人は約5万2千団体(昨年11月末時点)。都道府県別では、兵庫県は東京都、神奈川県、大阪府に次いで4番目の数を誇る。阪神・淡路をきっかけに設立された団体が多い一方で、震災から20年以上がたち解散も目立つようになってきた。

 代わりに、台頭しているのが一般社団法人だ。08年以降、NPO法人に比べて設立や報告の手続きが簡単なため急増。最大の課題だった資金集めについても、自由度の高い事業ができるため、活用する市民グループが相次ぎ、現在では1500以上が県内で活動しているといわれる。

 高まる市民力をどう復興に生かしていくのか。官が示した復興の道筋を、民がただたどる時代ではない。市民の声、意見を復興の基軸に。市民主体の復興の理念を根付かせよう。(前川茂之)

■防災省の創設を 熊本地震を機に議論再燃

 昨年7月9日、関西広域連合の有識者懇話会で一つの提言がなされた。

 「強い調整力で(災害の)事前対策から復興までを、総合的に進める官庁が求められる」

 この提案から約3週間後、岩手県で開催された全国知事会議でも同じ議題が取り上げられた。「防災庁を創設すべきだ」。「岩手宣言」と呼ばれるこの宣言では「あらゆる災害に負けない『千年国家』を創り上げる」とうたった。

 防災や災害対応、復興を一元的に担う組織の必要性は、阪神・淡路大震災以降、幾度も議論され、兵庫県は2015年から創設の提案を続けてきた。井戸敏三知事は「防災庁はゴールや目的ではなく事前防災という発想の確立の象徴」とも述べている。

 東日本大震災後、復興庁が創設されたが、2021年には廃止される時限的組織で、今後予想される巨大災害は対応できない。

 国は15年3月に「必要性は直ちには見いだしがたい」と創設見送りの結論を出したが、16年の熊本地震以来、議論は再燃している。

 自民党内では石破茂・元幹事長が口火を切り、同年5月には、東日本の政府対応を検証した自民党チームが、専門の人材を確保する必要性から「災害対策を担う独立組織の新設も視野に入れるべきだ」との報告をまとめるなど、機運は徐々に高まりつつある。

 南海トラフ巨大地震は30年以内の発生確率が70%とされる。いずれ来ることが避けられない巨大災害に対し、国が取り組むべき重要な備えだ。関西広域連合は今後、シンポジウムの開催などで全国に発信していく方針で「まずは認知度を高めていく。社会全体に必要性を訴えていきたい」としている。

(前川茂之)

■「防災」を必修科目に 裾野拡大へ教員養成課題

 阪神・淡路大震災は、災害に備える必要性を浮き彫りにした。防災教育は、災害対策の礎となる。

 兵庫県内では、2017年4月に県立大が大学院「減災復興政策研究科」を設置するなど、防災の人材育成に向けた研究機関が次々に発足している。今春には神戸市立科学技術高が防災士の取得を目指す授業を始める。02年に全国初の防災専門科として開設した県立舞子高環境防災科は被災地支援などの実績を積み重ね、宮城県教育委員会が16年4月に2例目となる防災専門科を県立高に設置するなど、そのノウハウは全国に広がっている。

 兵庫県教委や神戸市教委は、副読本を用いた防災学習に加え、小中学校の各教科で防災との関連を教える。昨夏、県内の教職員有志が「防災学習実践研究会」を立ち上げ、防災教育の推進に向け意見を交わす。

 東日本大震災後、政府も防災の教科化を議論した。17年3月の「第2次学校安全の推進に関する計画」では、教科横断的に防災教育を実施し、質量ともに充実させる方針を示した一方、「地域や学校間で差があり、継続性が確保されていない」と懸念。兵庫県立大の諏訪清二特任教授(57)は「先進的な研究が進む一方、裾野が広がっていない。現場の教員がいかに普段から防災を意識するかが課題だ」と指摘する。

 民間団体のまとめでは、1月17日前後に追悼行事や訓練を実施する県内の学校園(私立を含む)は1449カ所に上り、実施率は約7割。阪神・淡路を学校現場で経験した世代が次々と引退する中、教訓を確実に伝えていくためにも、全学校園で取り組む機運を醸成したい。防災先進地として蓄積したノウハウを、いかに普遍化し、学校現場に広げていくかが求められている。(井上 駿)

2018/1/19

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