記事特集
阪神・淡路大震災を機に、全国で唯一、防災を専門的に学ぶ「環境防災科」が舞子高校(神戸市垂水区学が丘3)に設置されてから15年。震災を直接知らない生徒が、神戸の街を、全国の被災地を歩いている。10代の生徒たちはなぜ災害を学ぶのか。生徒と教員の今を伝えたい。
2011年3月11日、当時小学5年だった滝川拓海さん(18)はテレビの映像に息をのんだ。東北の街にじゅうたんを引くように広がる黒い波。「これは日本なん?」。あまりの光景に、何が起こっているのかがしばらく理解できなかった。
翌日から、ニュース番組を見るたび増え続ける死者の数に違和感を覚えた。「この数字は人間を数えているのに。一人一人が誰かの大切な人なのに」と、積み重なる数字が信じられなかった。「なんでこんなことが起こるんだろう。こんな悲しいことを減らすためにはどうすればいいのだろう」。そんな思いで、防災や減災を考え始めた。
4年後の15年春、環境防災科に入学した。しかし、「防災を学んで誰かを守りたい」という希望はすぐに打ち砕かれた。その年の夏にあった宮城県石巻市の見学。バスを降りた瞬間から、空気が違うと感じた。住宅地だった場所に残るのは、家の土台と草だけ。もちろん人はほとんどいない。そんな景色がずっと続いていた。
こんな大自然の力にはどう考えても勝てない。防災は無力なんや-。津波から4年の歳月を経ても、被害を生々しく残す被災地で、防災の限界を感じた瞬間だった。しばらくの間、無気力が続いた。「防災科にまで進んで、一体何になるんだろう」。ネガティブな考えが先行し、なかなか前を向けなかった。
転機となったのは翌16年6月、2年生で参加した熊本地震の被災地ボランティアだった。地震から2カ月。熊本にあったのは、傾いた家、ぺしゃんこになって屋根しかない家、今にも崩れそうな家。「東北と同じやん」。またしても絶望感に襲われた。
倒壊した家の片付けを手伝っていると、1人暮らしの高齢女性から尋ねられた。「この家はどうなるの?」「修理にどれくらいかかるの?」。何も分からない自分に嫌気が差したが、同時に気付いた。「僕に正しい知識があれば、この人たちの不安を減らせるかもしれない」
無力感の一方で、これまでとは違う手応えがあった。「来てくれてありがとう」という言葉にも力をもらった。「もう一度、防災を勉強しなければ」と思い直せた。
その後、学校の活動とは別に、個人で何度も熊本を訪れた。現地に知り合いが増え、電話やメールでやりとりを続けている。
年が明けた今月4~8日には、益城町に入った。以前はつぶれた家の屋根だけが見えていた住宅地に、新しい家が並んでいた。少し安心したが、今もブルーシートが掛けられたままの建物や、倒壊の危険性を示す赤い張り紙が貼られた建物があった。
「被災地の人たちが『もう大丈夫』と言うまでは、支援の手が必要」と話す18歳の滝川さん。「だから僕は、一生かかったとしても被災地・熊本に携わりたいんです。それが僕なりにできることだと思うから」。(勝浦美香)
■兵庫県立舞子高校環境防災科 1995年の阪神・淡路大震災を教訓に、全国で初めて高校に設けられた防災教育の専門学科。2002年4月に1期生が入学した。各学年に40人ずつ在籍し、カリキュラムの約3分の1が防災教育に充てられる。外部講師が過去の自然災害を説明する専門授業や被災地でのボランティア活動のほか、震災で大きな被害を受けた長田区のまち歩き▽消防学校体験入校▽六甲山フィールドワーク-などの校外学習もある。
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