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 神戸新聞社が2015年1月に示した「6つの提言」では、1月17日を「自らの原点」と位置づけ、亡き人々の魂を受け継いで阪神・淡路大震災に向き合い続けていくことを誓った。住宅の耐震化、地域経済の支援、知恵の共有。震災の教訓はどこまで生かされているのか。問い直したい。(前川茂之)

■住宅の耐震改修義務化を 県内90%弱目標値届かず

 「耐震性がない住宅の所有者は、誰かの命を奪う『加害者』になりかねないことを自覚すべきだ」

 仙台弁護士会の吉岡和弘弁護士は強い言葉で語る。2012年、日本弁護士連合会は国に対し、住宅の耐震改修を義務化するよう新法の制定を求めた。吉岡弁護士は意見書作成に携わったメンバーの1人だ。

 災害時、住宅が倒壊すれば、大切な家族を守れないだけでなく、偶然居合わせた第三者を巻き込んだり、道をふさいで人命救助や復旧作業を阻害したりと、2次被害を招く恐れがある。「自己責任では済まされない。欠陥を知りながら放置することは賠償責任にも関わる」

 阪神・淡路大震災では約25万棟が全半壊し、死者の大半が倒壊した家の下敷きになった。住宅の耐震化は震災で学んだ最も大きな教訓のはずだが、16年の熊本地震でも約4万3千棟が全半壊し、圧死の被害が出ている。

 しかし、その取り組みは進んでいない。兵庫県の住宅耐震化率は85・4%(13年時点)。1981年以前の「旧耐震基準」で耐震化されていない住宅は約34万6千戸に及ぶ。県は15年度に全住宅の耐震化率を97%にするとの目標値を掲げていたが、達成が困難とみて10年後に先伸ばしした。

 一方、国は耐震改修促進法の改正を重ね、病院や学校など公共性の高い建物について耐震診断を義務付けたが、個人の住宅は所有者の自発性に任せている。

 吉岡弁護士は、こうした国の姿勢を「時間がたてば旧耐震住宅は、いずれなくなるという『待ち』の姿勢を取っている」と批判。その上で「阪神・淡路や東日本大震災を経て、国民の意識は大きく変わった。災害が起きてから対応するのではなく、備えることが重要。新たな一歩を踏み出す時期に来ている」とさらなる促進策を国に訴えている。

■地域経済を支える多彩なメニューを 港湾復権医療産業に活路

 被害総額約9兆6千億円。阪神・淡路大震災は工場や事業所に直接被害をもたらしただけでなく、電気や道路などインフラ網もずたずたに引き裂いた。

 長年、経済と暮らしを支えた神戸港。かつてはコンテナ取扱数世界3位を誇った勢いは震災で消え、他港に次々と追い越された。復権に向けた足取りは着実になりつつある。

 震災20年目に当たる2015年、ようやく震災前の水準を取り戻した。大きく水をあけられている中国・上海や韓国・釜山などとの競争力を高めるため、神戸港と大阪港の「阪神港」は10年、国際コンテナ戦略港湾に指定され、集中投資も行われている。16年にはコンテナ取扱個数で横浜港を抜き、国内2位に浮上した。

 神戸空港は17年の旅客数が06年の開港以来、最多の約304万人。4月には民営化を控え、さらに利便性が高まることが期待される。昨年12月には神戸市須磨区に航空産業非破壊検査トレーニングセンターがオープンし、厚みのある事業が展開されようとしている。

 被災地の経済に新たな柱となることが期待されてきた神戸・ポートアイランド2期の医療産業都市は今年、構想から20年を迎える。運営主体の「先端医療振興財団」が今春「神戸医療産業都市推進機構」に改組され、産学連携などの機能強化に乗り出す。目指すはアジアを代表するバイオメディカルクラスター(集合体)だ。

 スーパーコンピューター「京(けい)」(神戸市)や「スプリング8」(兵庫県佐用町)など世界最高クラスの性能を誇る施設は、研究施設と企業活動をつなぐ役割を果たす。三宮再整備など地域経済に影響する動きもこれから具体化する。

 こうした足取りには長い時間を要した。産業や経済は、被災地が再生へともがいている間にも、急速に形を変えていく。災害前の姿に戻すだけでは競争力を持ち得ない。

 東日本大震災の被害総額は約16兆9千億円。広大な被災地を抱える東北の経済再生は、阪神・淡路にも増して長期化が予想される。次代を見据え、地域の実情に合った支援策が求められている。

■BOSAIの知恵を世界と共有しよう 国連会議で行動指針採択

 2015年3月。180以上の国が参加した国連防災世界会議で、今後の国際社会の方向性を示す重要な行動指針が採択された。

 「30年までに災害による全世界の死亡率、被災者数を大幅に削減する」

 地球温暖化により、全世界で災害が激しさを増す中、防災力強化のために各国が協力する重要性が記され、具体的な期限目標も初めて盛り込まれた。指針は開催地から「仙台防災枠組」と呼ばれる。

 基となったのは、05年の前回会議でまとめられた「兵庫行動枠組」だ。阪神・淡路大震災の教訓を基に、それまで発生対応に追われていた世界の国々に「防災」の重要性を示した。

 「兵庫で提唱された『防災』が根付いてきたことで、各国がより具体的で、実践的な防災計画の策定に取り組むようになった」

 兵庫県と国際協力機構(JICA)でつくる「国際防災研修センター」(神戸市)の安田寛治・主任調査役は指摘する。

 同センターでは07年の発足から16年度までに、計107カ国2319人に研修を実施。災害医療やインフラ対策など、阪神・淡路以降、培ってきた防災対策のノウハウを各国に提供している。

 国内外にかかわらず、自然災害が起こるたび、兵庫からはいち早く、官民さまざまな団体が被災地に向かう。東北や熊本など被災地との交流も活発だ。実践を通じた教訓の共有は、確実に広まっている。

 17日に読み上げられた「ひょうご安全の日宣言」では、そんな県民の思いをこううたう。「あの震災の教訓を知ってもらいたい。活(い)かしてもらいたい」「震災の教訓は、すべての災害に通じる知恵だから」と。

▼5つの復興課題も

 神戸新聞社は、6つの提言と併せ、「5つの復興課題」を示した。阪神・淡路大震災と東日本大震災の被災地に共有する課題として挙げたが、2016年の熊本地震を踏まえ、あらためて広く投げ掛けたい。

・復興住宅入居者を孤立させない仕組みを

・一人一人の「暮らし再建」を基礎に

・「関連死」データ蓄積と幅広い認定に向けたガイドラインを

・広域避難者の継続支援を

・震災で心身に傷を負った人の支援継続を

2018/1/19

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