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【特集】ニュース解く説く TOKTOK

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 兵庫県は瀬戸内海の海水について「きれい過ぎてはダメ」と、水質管理に新たな基準を設けました。これまで「きれいな海」を目指して規制してきた海水中の窒素濃度について下限値を設け、下水処理場の水質基準も見直します。「豊かな海」を目指すそうですが、どういうことなのでしょう? (山路 進)

■高度成長期 排水による汚染改善向け法律や規制

 高度成長期、阪神や播磨の工業地帯が栄えた一方、工場や家庭の排水で川や海の水は濁り、水をきれいにする法律や規制ができました。

 瀬戸内海では植物プランクトンが大量発生し、赤潮が頻発。海の酸素を消費し、浜辺にたくさんの死んだ魚が打ち上げられました。

 近畿や中四国、九州の沿岸自治体は瀬戸内海をきれいにするよう求め、1973年に瀬戸内海環境保全臨時措置法が、78年には同保全特別措置法(瀬戸内法)が制定。プランクトンの栄養が増え過ぎた「富栄養化」解消に向け、「栄養塩」とされる窒素やリンの濃度も規制されました。

 排水処理技術の向上や下水道の普及もあり、海への窒素やリンの供給はどんどん減少。窒素やリン、水の汚れを表す指標、化学的酸素要求量(COD)は低下し、多い年には120件に迫った赤潮の発生は年約20件にまで減りました。

■海水浄化 漁獲量に異変

 ところが瀬戸内の漁業に異変が。年7万~8万トンほどあった漁獲量(養殖業を除く)が96年以降は6万トン台に減り、質、量とも全国屈指の養殖ノリが色落ちするように。窒素やリンは農作物肥料の主成分で海藻や植物プランクトンの栄養です。それを食べる小魚、大魚と連なる生態系に異常が起きていると指摘され始めました。

 沿岸自治体を中心に対策を求める声は高まり、2015年には国会の議員立法で改正瀬戸内法が成立。美しさを求めるだけでなく「豊かで美しい海」を目指す政策へと転換されました。

 海底を土砂でかさ上げし、岩を沈めて魚介のすみかや産卵場をつくるなどし、陸でもため池の水を抜き、海に栄養素を供給する「かいぼり」が復活。栄養豊かな池の水を海に届ける活動が広がりつつあります。

 しかし、兵庫県沿岸の瀬戸内海の漁獲量は4万トン前後と回復しません。17年には春の味覚、イカナゴのシンコ(稚魚)の漁獲量が前年の1割に届かず、18年、19年も低迷し続けています。

 県は瀬戸内海の栄養塩の回復策を専門家でつくる県環境審議会に諮問(相談)。改正瀬戸内法は栄養塩の減少と水産資源への影響に関する調査の必要性を指摘しましたが、具体策は示しておらず、審議会は海の窒素やリンの濃度、COD、漁獲量の変化などを検証しました。

 00年以降、工場地帯を除く県沿岸の瀬戸内海の栄養塩濃度はピーク時の3分の1とスキューバダイビングに適するほどに薄まっていたのです。漁獲量の減少との関係も示唆されました。

■栄養増やす取り組み

 審議会の議論を経て、県は今年10月、条例を改正し、窒素とリンを減らそうと規制してきた上限値に加え、減らし過ぎないために県独自の下限値(窒素は海水1リットル中0.2ミリグラム)を設けたのです。同時に、豊かで美しい瀬戸内海の再生に努めることを事業者や県民の責務としました。

 さらに海の栄養が減る冬場、下水処理場の排水に含まれる窒素をあえて残す「季節別運転」の実効性を高めるため、生物化学的酸素要求量(BOD)値の規制撤廃に必要な条例改正案を県議会12月定例会に出しました。

 工場排水にも多くの窒素が含まれ、陸から海に届く約3割を占めています。企業の窒素放流を促すため、県は本年度中にガイドラインをまとめる予定です。

 審議会のメンバーで京都大の藤原建紀(たてき)名誉教授(70)=海洋生物環境学=は「異変が起きている海に目を向け、まずは海の窒素やリンを減らし過ぎてはいけないことを知り、理解してほしい」と話しています。

2019/12/8

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