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【特集】ニュース解く説く TOKTOK

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 あと3週間ほどで「師走」を迎えます。例年ですと、ベートーベン「交響曲第9番合唱付き(第九)」の演奏会が全国各地で開かれる時期ですが、今年は新型コロナウイルスの影響で中止が相次いでいます。公演数は昨年より大幅に減る見込みで、一時取りやめとなっていたオーケストラのコンサートが復活しているのとは様相が異なります。背景には、第九の特徴である合唱の際に発生する飛沫(ひまつ)拡散の懸念があります。(津谷治英)

■感染防止へガイドライン「練習はマスク着用、30分」

 第九公演はオーケストラ演奏にソロ歌手、大勢のコーラスが融合する迫力ある舞台が魅力です。合唱団は100人クラスから1万人が参加する大規模なものまであり、女性のソプラノ、アルト、男性のテノール、バス(独唱はバリトン)と多彩な声も楽しめます。

 ただ、大勢が舞台に上がるだけに、歌う際の飛沫は避けられません。新型コロナの感染拡大を受けて6月、全日本合唱連盟は「合唱活動における感染症拡大防止のガイドライン」を作成し、その後も随時更新しています。

 「練習時はマスク着用が好ましい」「距離をとる」など、内容は練習時の環境、演奏会開催時の注意点など多岐にわたります。クラシック曲の歌唱は大きく息を吸い込み、吐く必要があります。合唱団員からは、マスクを着用すると、「息苦しい」「仲間の声が聞き取りにくく、合わせづらい」との声が上がっています。

■会場確保や換気課題 公演数、大幅減少へ

 ガイドラインが作られたとはいっても、公演を実現するには大きな障壁があります。

 第九は全編、ドイツ語の歌詞。プロの歌手や経験者ならば発音、声の強弱などのポイントに習熟していますが、初めて挑戦する人は長期の練習が必要です。

 ステージで距離をとることも大きく影響します。一定の広さが必要となる上、人数を絞る必要があります。さらに会場の協力も不可欠です。兵庫県立芸術文化センター(西宮市)は、夏から感染対策のため実験や工夫を重ね、センター主催の第九公演を開くことにしました。いずれにしても開催できる会場は限られています。

 ほかにも、練習場所の確保や換気、団員の健康チェックなど感染予防策の徹底が、各団体を悩ませています。やむを得ず中止を決める団体もあります。

 1972年の初演以来、ほぼ毎年開催してきた「姫路第九合唱団」は既に中止を決めました。観客、団員の安全に配慮し、苦渋の決断をしたそうです。

 一方、51年結成の老舗合唱団「神戸フロイデ合唱団」は、夏の定期公演を中止しましたが、第九は県立芸術文化センターでの開催を決めました。先行きが見えない中、新団員に配慮して7月から活動を再開。練習時の換気や団員間の距離に気を付けながら歌声を磨いています。

 こうした動きは、パートナーを務めるオーケストラにも深刻な影響を与えています。非常事態宣言で延期、中止が相次いだ演奏会は、感染予防を講じながら再開傾向です。飛沫に関しても合唱ほどの心配はないとされています。

 しかし第九に絞って関西の主要オーケストラの公演数をみると、それぞれ昨年の3~7回から1~2回へと大幅に減少。収入にも影響するだけに、団員らの生活が心配されます。

■戦後幅広く浸透 「文化守るため継続」

 クラシック音楽は難しいと思っても、第九のメロディーには親しみを持つ人が多いでしょう。年末の公演は、本場ドイツでも恒例。日本でも大変な人気となっています。

 きっかけは1918年、徳島県鳴門市にあった板東俘虜(ふりょ)収容所です。第1次世界大戦で敗戦国となったドイツ兵捕虜が、この地で第九を披露したことが知られています。全員男性でしたが、女性パートもアレンジして歌ったそうです。

 太平洋戦争を経て47年12月、現在のNHK交響楽団が3日連続の「第九」演奏会を開き、多くの聴衆を集めたことから国内のオーケストラに広がりました。

 今年はベートーベン生誕250周年の節目です。新型コロナがなければ、例年以上に年末は盛り上がったかもしれません。

 クラシックファン以外にも浸透した「年末の第九」文化を、地味ながらも後世に伝えたい-。各団体はそんな思いで公演の実施に取り組んでいます。

2020/11/8

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