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【特集】ニュース解く説く TOKTOK

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口上をする(左から)林家染吉さん、桂米団治さん、桂八十八さん、桂勢朝さん=神戸新開地・喜楽館
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口上をする(左から)林家染吉さん、桂米団治さん、桂八十八さん、桂勢朝さん=神戸新開地・喜楽館
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曽我廼家を継いだ(左から)桃太郎さん、一蝶さん、いろはさん
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曽我廼家を継いだ(左から)桃太郎さん、一蝶さん、いろはさん
落語家の桂米朝さん
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落語家の桂米朝さん
桂米朝さんの俳句を手にし、神戸新開地・喜楽館での記者会見に臨む八十八さん
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桂米朝さんの俳句を手にし、神戸新開地・喜楽館での記者会見に臨む八十八さん

 人間国宝だった兵庫県姫路市出身の落語家・故桂米朝さんの俳号「八十八(やそはち)」を、弟子の宗助さん(57)=同県尼崎市出身=が8月に襲名し、10月25~31日、神戸新開地・喜楽館(神戸市兵庫区)で披露公演がありました。また、松竹新喜劇では11月6~21日の公演(大阪松竹座)で、喜劇の祖とされる「曽我廼家(そがのや)」の名跡(みょうせき)を同劇団の若手3人が継承します。襲名、名跡の継承は、どんな意味があるのでしょうか?(金井恒幸)

■名前に込められた魂を受け継ぐ

 襲名は、落語のような古典芸能や伝統技術で、先祖や師匠などの名を継ぐことです。落語や喜劇のほか、歌舞伎や講談、能楽、文楽など幅広い芸能や、陶工などの伝統技術で、今も続いています。名前に込められた魂や精神性も引き継ぐことが求められます。

 米朝さんは戦後衰退していた上方落語を、六代目笑福亭松鶴さん、五代目桂文枝さん、三代目桂春団治さんと共に「四天王」として復興に尽力し、2015年3月に亡くなりました。俳句が好きで、「米」という字をバラした「八十八」を俳号としていました。

 没後5年の昨年、語り口が米朝さんに似て、生き写しともいわれた宗助さんに、米朝さんの芸の遺産を引き継いでほしいと、八十八襲名が決まりました。

 今年8月の大阪公演で正式に襲名し、神戸など全国各地で披露公演を行いました。俳号を継ぐことは、歌舞伎界ではありますが、落語界では珍しいといいます。

 一方、曽我廼家は十郎さんと五郎さんが1904年、「喜劇」と銘打った劇団を大阪・道頓堀で旗揚げし、その流れをくんで松竹新喜劇が誕生しました。今回は名跡を長く残すために若手を選び、曽我廼家の襲名は39年ぶりです。

 襲名したのは、一蝶(植栗芳樹)さん、いろは(桑野藍香)さん、桃太郎(竹本真之)さん。このうち一蝶さんは「名前にある『一』と同じく、襲名を一から始める新たなスタートにしたい」と抱負を述べました。

■心機一転で発奮材料に

 落語の世界は世襲制ではなく、師匠に弟子入りするのが一般的です。そのため今回の八十八さんのように、息子ではなく他人が名を継ぐ場合があります。

 米朝さんの長男は落語家で、弟子でしたが、名前は「小米朝」から米朝さんの師匠の「米団治」を2008年、襲名しました。「米朝」という名は人間国宝にもなった名前でもあり、現時点では一門に襲名する予定者はいないそうです。

 同じ上方落語の「四天王」では現在、六代目文枝さん(旧名は三枝)、四代目桂春団治さん(旧名は春之輔)が襲名していますが、いずれも先代の息子ではありません。

 襲名の利点は何でしょうか。本人にとっては名前を変えることで、新しく生まれ変わる機会にできます。責任感や自覚が増し、発奮材料にもなります。

 知名度向上にもつながります。披露公演は全国各地で一門と共に開くことが多く、他の落語家がアピールする場にもなります。

 名前を変え、人気がさらに増すというケースもあります。米朝さんは名前を変えませんでしたが、その弟子である故枝雀さん(神戸市出身、旧名は小米)は襲名後、さらに「爆笑王」の名を全国に広めたのは、記憶に残るところです。

 ただ、これまでの名が親しまれていた場合、新しい名前がすぐには浸透しないこともあります。

■真打ち制度ない上方の特有性

 襲名には、上方落語特有の大きな意義もあります。

 関東の落語界は、前座、二つ目、真打ちとステップアップする制度があり、真打ちになると披露公演が盛大に行われます。一方、上方落語は真打ち制度がないため、襲名披露が、関東よりも一層貴重になるのです。

 2006年、大阪の落語界では約60年ぶりとなる、毎日公演する「定席」の「天満天神繁昌亭」が開館し、18年には2番目の定席「神戸新開地・喜楽館」ができました。二つの定席ができ、襲名披露がしやすい環境が整いました。

 喜楽館での初日の襲名口上では、八十八さんは頭を下げたままで、米団治さんら兄弟子が「ご愛顧をよろしくお願いします」と呼び掛け、会場から大きな拍手が起こりました。

 トリの八十八さんはマクラで、「今から稽古やろか」という米朝さんの物まねを披露し、師匠も得意な講談を題材にした「くっしゃみ講釈」で笑いの渦を巻き起こしました。

 「米朝師匠が復活した演目を引き継いでいきながら、自分の色も出していきたい」と八十八さん。今後の飛躍を、天国にいる米朝さんと共に、見守っていきたいですね。

2021/11/7
 

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