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【特集】ニュース解く説く TOKTOK

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神戸学院大法学部教授(憲法学)・上脇博之氏
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神戸学院大法学部教授(憲法学)・上脇博之氏

 総務省の官僚への放送・通信事業者による接待が問題になっています。国家公務員にとって最も大切な役目は国民全体のために仕事をすることで、憲法にも明確に定められています。総務省の接待問題は、日本社会でとても大切なこの原則を考える良い機会になりそうです。

■利害関係者は 倫理規程で禁止

 総務省では、高い地位にある官僚が、自らが担当する放送・通信業界の二つの会社から食事の接待を受けていたことが分かりました。ルールを決めている国家公務員倫理法に基づく倫理規程は「利害関係者から供応接待を受けること」を禁止しています。この規程に違反するとして、接待を受けていた国家公務員は減給などの処分を受けました。

 片方の会社だった東北新社は、菅義偉首相の長男が働いていて、食事の席にもいました。総務省のナンバー2である総務審議官だった山田真貴子氏は、1回に7万円を超える接待を受けていましたが、すでに総務省を辞めて、菅首相の記者会見を仕切る内閣広報官になっていたため、処分の対象にはなりませんでした。問題発覚後に広報官は辞職しました。

 もう片方の会社、NTTは仕事の計画や役員の人事を総務省に認めてもらう立場です。しかし、山田氏や、同じく総務審議官を務めた谷脇康彦氏らが、NTT社長らから接待を受けていました。

■疑惑招く行為 大臣も許されず

 官僚は人々が決まりを守っているかをチェックしたり、会社が新たな仕事を始めるのを許可したりといった大きな力を持ちます。そのため、一部の人を特別扱いすることは許されず、疑われるような行動もしてはいけません。

 許可などを出す相手の人から高価な食事をおごってもらうなどすれば、官僚はその人たちのために働いているのではないかと疑われるのも当然です。

 また、官僚だけでなく、歴代の総務相らも、NTTの社長らと会食をしていたことが分かりました。現在の武田良太総務相も社長と食事の席を共にしていました。大臣、副大臣、政務官を指す「政務三役」の服務ルール「大臣規範」にも、「国民の疑惑を招くような行為をしてはならない」と定められています。

■席上での会話 企業側の意図不明

 今回の問題では総務省の多くの官僚が処分されましたが、なぜ接待が行われたのか、二つの会社への特別扱いはなかったのかなど、肝心の点は分かっていません。国会や政府が徹底して真相を究明しなければ信頼は取り戻せません。

 東北新社は、外国資本の出資比率が規制の対象となる20%を上回り、衛星放送の事業を認められる条件を満たしていないのに、総務省に認められていました。同社は「誤りに気付いて報告した」と説明していますが、総務省は「そんな報告は覚えていない」と言い、話が食い違っています。

 菅首相の長男が勤める会社なので、官僚が接待の誘いを断れなかったのではという疑問も挙げられています。

 NTTグループの接待は、菅首相が官房長官として「携帯電話料金は値下げできる」と言っていたころや、NTTが携帯電話の会社「NTTドコモ」を完全子会社化する前にも行われていました。どちらも通信業界にとって極めて大事な事柄です。接待の席でどんな話が出たのか、はっきりさせることが必要です。

■東北新社負担の違反接待39件 

 東北新社は1961年創立で、テレビ番組やコマーシャル、映画製作を手掛けています。総務省が所管する放送事業には、86年に映画専門の子会社「スター・チャンネル」を設立して参入。89年に衛星放送を開始しました。

 衛星放送は近年、ネットフリックスなど動画配信サービスに押され、苦戦しています。2018年に開始した4K放送の設備投資も負担となり、経営を圧迫しています。

 20年11月には、東北新社の子会社がBS「スター・チャンネル1~3」について、周波数の帯域(スロット)を計41から36に縮減しました。接待が相次いだ同年12月には、「スター・チャンネル」は衛星放送の許可更新が認められました。

 総務省が倫理規程違反の疑いがあるとした接待は39件で、全て東北新社が費用を負担していました。追及されたのは、こうした接待が、「囲碁・将棋チャンネル」など東北新社の子会社が手掛ける番組の認定や、BS放送の帯域(スロット)返納といった放送行政に影響を及ぼしたか、どうかです。

     ◇     ◇

【教えて!先生】第三者機関の調査必要 神戸学院大法学部教授(憲法学)上脇博之氏

 接待の問題は、大きな枠組みとして、刑法上の贈収賄に当たるかどうか、国家公務員倫理規程に抵触するかどうか-の二つの視点があります。

 民間企業は、自社に有利な状況にしてほしい、ルールを曲げてでも許認可を得たい、などの思いで公務員に近づきます。一方、公務員は全体の奉仕者であり、法令に基づいて業務をしなければならず、特定の人を特別扱いできません。

 今回は倫理規程違反が問われていますが、企業側から渡されたお土産の中に現金でも入っていれば贈収賄で捜査されるでしょう。そういった大犯罪に至らないように、その手前に倫理規程が設けられています。

 本来は利害関係者とは勤務中に議事録を残して話せば良いだけ。食事をおごってもらわなくても、勤務時間外に会うこと自体が国民の不信を招きます。信頼を回復するには、省内ではなく第三者機関が調査し、国民が納得できる報告書を出すことが必要でしょう。

 近年は内閣の権限が強化され、それを支える特定の政党、特定の政治家などの思惑で公務員が仕事をさせられている、と思われる事例が続いています。この問題の根は深いと考えます。(聞き手・高田康夫)

2021/4/25
 

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