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【特集】ニュース解く説く TOKTOK

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 夫婦が希望すればそれぞれが結婚前の姓を名乗れる「選択的夫婦別姓」の法制化を求める声が高まっています。長い間、実現への機運が高まるたびに反対論が起こって立ち往生する展開が繰り返されてきました。政府が「女性が輝く社会」を掲げ、多様な生き方を認め合おうという時代になぜ、この問題はいつまでも進まないのでしょう。(論説委員 勝沼直子)

■“保守派”の壁 後退した表現

 選択的夫婦別姓制度を盛り込んだ民法改正案を、法制審議会が答申してから四半世紀たちます。しかし、国会の議論はいまだに始まっていません。最大の壁は、国会で長く多数を占める自民党です。

 政府が昨年閣議決定した第5次男女共同参画基本計画はその典型でした。

 5年に1度の計画見直しを前に、内閣府が募集したパブリックコメントには「一人っ子なので実家の姓を残したい」「仕事の実績が引き継がれない」「改姓を避けるため結婚を諦めている」など、改姓の弊害や導入を求める意見が約400件寄せられました。反対はゼロでした。

 当初の計画案は、こうした声を紹介し「国会で速やかに議論が進められることを強く期待し、政府も必要な対応を進める」としていました。法改正も視野に入れた表現に、推進派の期待は高まりました。

 ところが自民党の会合で、伝統的な家族観を重んじる“保守派”の国会議員たちが「家族の一体感が失われる」などと強く反対し、文面の修正を何度も要求したのです。その結果、第4次計画まではあった「選択的夫婦別姓」の文言まで削られ、制度の「さらなる検討を進める」という表現に後退。「子どもへの影響」など、反対派に配慮した記述が盛り込まれました。

■起源は明治民法「女性差別」と国連

 反対派には、夫婦同姓を「日本古来の伝統」とする主張があります。しかし、庶民が姓を名乗るようになったのは明治新政府による1870年の「平民苗字(みょうじ)許可令」以降で、夫婦同姓を定めたのは98年制定の明治民法です。伝統といっても約120年前に時の政府が作ったもので、社会変化に応じた見直しは必要でしょう。

 明治民法の考え方は、女性は結婚して夫の家に入る「家」制度が基本にあります。戦後の民法改正で「夫または妻の姓を称する」と変わりましたが、厚生労働省によると実際に姓を変えるのは96%が女性です。妻は夫に従う、という意識は今も根深いことが分かります。

 海外では現在、日本以外に同姓規定は見当たりません。国連は同姓の強制は女性差別だとして日本政府に何度も廃止を勧告しています。

■訴訟相次ぎ高まる機運

 こうした状況を不当とする訴訟が相次ぎ、市民の動きも活発化しています。

 男女5人が夫婦同姓規定の違憲性を争った国家賠償請求訴訟で最高裁は2015年、「合憲」と初判断を示しましたが、15人の裁判官のうち5人は「違憲」との意見でした。その後も夫婦別姓を求める訴訟は続き、最高裁は昨年12月、事実婚の夫婦3組が起こした家事審判を大法廷で審理すると決めました。年内にも新たな憲法判断が示される可能性があります。

 内閣府の17年の世論調査では、選択的夫婦別姓について賛成が42・5%で、反対の29・3%、通称使用は認める24・4%を上回りました。

 18年に発足した市民団体「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」によると、制度導入を求める意見書を可決した地方議会は178に上ります。同団体が昨年、早稲田大研究室と合同で7千人を対象に実施した調査では、20~50代の約7割が選択制に賛成でした。

 世論を背景に、自民党でも賛同を表明する議員が増え始めました。同団体は「私たち一人一人が声を上げることで、国会の背中を押すことができる」と訴えています。

    ◇    ◇

【教えて!先生】世論の支持は「選択制」にある 立命館大法学部教授(家族法)・二宮周平氏

 早大研究室と全国陳情アクションの合同調査で導入に賛成した7割の内訳を見ると、同姓、別姓を望む人が同じくらいいる。どちらの立場でも他人に強いることはせず、選べる制度であること自体に価値を見いだしている。この調査で、世論は選択制こそ支持していると明確になった。

 基本計画の表現は後退したが希望はある。自民党の男性議員から選択制支持の声が上がり、地方議会が制度導入を促す意見書を次々に可決している。住民の声に応えた動きで無視できない。最高裁が新たな憲法判断を示せば、状況が大きく進む可能性がある。

 現実を直視し、未来を担う人たちの希望をかなえるのが政治の役割だ。ドイツのメルケル首相は同性婚の合法化を巡り、自らは反対だが党議拘束を外して議員個々の判断に委ねた。日本でも党議拘束を外し、選択制導入に向けた国会審議を進めるべきだ。

2021/2/14
 

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