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【特集】ニュース解く説く TOKTOK

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 バブル経済の崩壊で、就職が難しかった30代半ばから40代半ばの「就職氷河期世代」を支援する取り組みが広がっています。自治体や企業はこの世代に限った採用試験を開始し、国は多様な支援策を打ち出しました。なぜ今、本格的な支援が始まったのでしょうか。(小谷千穂)

■2000年高卒・大卒 12万人内定得られず

 就職氷河期とは、1990年以降のバブル崩壊をきっかけに景気が大幅に後退し、企業が一斉に新規採用を絞った93~2004年ごろを指します。大手銀行が経営破綻し、日本経済は極めて厳しい状況でした。これ以降は「失われた20年」とも称されました。この時期に新卒で就職活動をした30代半ばから40代半ばの世代は「就職氷河期世代」「ロストジェネレーション」と呼ばれています。

 就職が決まらずに高校や大学を卒業した人が最も多かったのは00年の約12万人。総務省によると、現在35~44歳の約1700万人のうち、35%に当たる約600万人が非正規雇用か無職です。100社以上を受けて採用されても、希望の仕事でなかったり、倒産やリストラが起きたり。複数の会社を渡り歩く人も少なくありません。中でも1971~74年に生まれた「団塊ジュニア」は人口が多いのですが、不安定な経済状況から結婚や出産に踏み切れない人がいて、今の人口減少の一因になったといわれます。

■不安定雇用 社会保障費増の恐れ

 政府がこの問題の対策に本腰を入れたのは2019年4月です。安倍晋三首相が経済財政諮問会議で「氷河期世代への対応は、国の将来に関わる重要な課題」と発言し、「骨太の方針」を決定。方針には、不本意に非正規で働く人や引きこもりにある人ら約100万人を集中支援し、3年間で30万人の正社員化が示されました。

 「対策が遅すぎる」との批判も出ましたが、ここにきて大々的な対策を進める背景には、社会保障費の増大が関係しています。年金や医療、介護などの社会保障費は30年前に比べて約3倍となり、国や地方の財政を圧迫。それなのに税収は大幅に不足し、国債発行額は30年間で約5倍になりました。18年度末で国の借金は、過去最大の約1103兆円でした。将来も社会保障制度を安定して維持するには、社会保障費の削減は急務です。

 一方で、氷河期世代のうち、非正規雇用や引きこもりなど不安定な状態の人が高齢化すれば、生活保護に頼ることになるなど、将来の社会保障費の膨張を招く恐れがあります。追加的な費用を20兆円とするシンクタンクの試算もあります。また、今春20年卒業・修了の大学・大学院生の求人倍率は1.83倍と「売り手市場」です。多くの企業が新卒採用に苦戦するようになり、氷河期世代を支援して正社員化する好機となった側面もあります。

■世代限定の中途採用 宝塚市が先駆け

 市町村で全国に先駆けて行動したのが兵庫県宝塚市です。中川智子市長は「非正規や引きこもりは自己責任でなく、救済しなかった社会の責任。まずは行政が自ら雇用すべき」として、昨年8月、氷河期世代に限定して正規職員を募集しました。全国から1635人が受験し、4人を採用。最終的な倍率は408倍となり、話題になりました。

 兵庫県内では、三田市や加西市、太子町が続き、2019年度に氷河期世代を対象に職員採用試験を実施、または実施を予定するのは全国で19の自治体に上ります。10人の採用を予定する兵庫県の試験にも1400人以上が応募しました。国も、国家公務員の中途採用枠で重点的な採用を決めました。行政の動きを受けて、民間企業や大学なども採用を始めています。

 直接的な採用のほか、政府は今後3年間で氷河期世代に特化した650億円を超える予算を確保し、多様な支援策を進めます。例えば、引きこもりの状態にある人に対し、個別に訪問して相談に乗る「アウトリーチ支援員」を地域に配置。全国のハローワークには専門窓口を設け、就職相談から職場定着までの一貫した支援体制をつくります。また、求職に有利な資格取得を支援する事業や、企業への助成金の拡充にも手を広げました。新たに交付金制度を創設し、遠方での職業訓練や就職説明会を受ける際の交通費を支給し、地元企業への就職を前提に奨学金の返済も支援します。

 「就職氷河期世代」とひとくくりで呼ばれるものの、歩んできた道のりや現状、必要な支援は人それぞれで違います。「3年間で正社員化30万人」という数字だけの目標にとどまらず、個々のニーズに沿った支援が今後、求められています。

2020/2/2

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