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【特集】ニュース解く説く TOKTOK

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田辺泰美氏
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田辺泰美氏

 兵庫県明石市の児童相談所が虐待を疑って一時保護した乳児が1年3カ月間、家族と引き離される事案がありました。繰り返される子どもへの虐待事件に関心が高まる中、児童相談所への通報・相談は増え続け、子どもを一時保護するケースも右肩上がりで増えています。一時保護の仕組みや現状、課題について考えてみましょう。(小西隆久)

■親の同意は不要

 一時保護は児童福祉法33条に基づき、児童の安全を確保し、心身の状況を把握するため、児童相談所長が判断して行う行政処分です。子どもに虐待の危険がある場合や、親が病気や経済的な理由で養育できない場合の「緊急保護」、子どもの支援方針を決める上で十分に観察するための「アセスメント保護」という機能があります。

 虐待の通報や相談を受けた児相では、所長や児童心理司らによる「受理会議」をまず開き、通報内容についての確認や調査方針を検討します。さらに現場を確認した担当者の報告を基に再び会議を開き、子どもを保護するのか、家庭に置いたまま支援、指導するのかを決定します。

 厚生労働省が2018年に定めた「一時保護ガイドライン」では、一時保護する際は「子どもの利益を最優先」に考えるとし、緊急時には「親の同意がなくとも」「ちゅうちょなく行う」ように求めています。

 今回の明石市のケースでも、児相は自分では動くことのできない乳児が骨折していたことを重視し、さらなる被害も想定されるとして、虐待を否定する両親の意思に反して一時保護しました。

■原則2カ月超えて長期化の傾向

 2018年度に全国の児相が受けた虐待の通報・相談は15万9838件で、13年度からの5年間でおよそ2倍に増えました。一時保護も同じく、18年度2万4864件と5年間で1万件増えています。

 こうした状況に伴い、児童福祉法で「原則2カ月以内」と定められている期間が長期化する傾向にあります。

 厚労省の調査では、昨年4~7月に一時保護が終了した7628件のうち、18%が2カ月を超えました。1年以上に及ぶケースも22件ありました。

 理由の一つに、虐待の有無などをめぐる児相と親との対立が増えていることが挙げられます。児相が児童養護施設などに子どもを入所させる必要があると判断した際、親の同意がなければ家裁に審判を申し立てる必要があります。審判は昨年434件と10年前の2倍。家裁の決定が出るまで保護が続くため、長期化につながります。

 他方、一時保護が解除された後に子どもが死亡する事件も多発しています。児相の元職員は「たとえ1%でも虐待の疑いがあれば、家庭に帰すことはできない。その判断ミスが子どもの命に直結している」と訴えます。

■「親子の交流権剥奪」国際的な批判

 今回の明石市のケースで、児相による一時保護が妥当かどうかを第三者の目でチェックする仕組みがなかったことを市は問題視しています。国も9月、家裁が審査する制度について検討を始めました。

 さらに市は、保護期間中の面会が月1、2回程度に制限されていたことも課題に挙げています。

 国連子どもの権利委員会は昨年2月、日本政府に「子どもを家族から分離する際は、司法による審査を導入する」よう求める勧告を出しました。さらに「子どもが親との交流を維持する権利を剥奪」している現状に懸念を示し、日本の一時保護に対する国際的な批判は高まっています。

 これに対し、厚労省が全国の児相に実施したアンケートで約7割が「(書類作成などの)業務負担が大きい」「一時保護のちゅうちょにつながる」と否定的な意見を寄せています。

 虐待による無念の死を防ぐという至上の目的を果たすため、親と子の権利を制限する弊害を改善しつつ、現場の負担をいたずらに増やさない一時保護の運用が求められています。

    ◇    ◇

【教えて!先生】第三者のチェック急務 園田学園女子大学教授(子ども家庭福祉) 田辺泰美氏

 海外では子どもや親の権利を制限しすぎるとして、日本の一時保護に当たる行政の介入を見直す動きもある。

 英国でも1987年、性的虐待を疑って行政が発令した安全命令(一時保護)などの介入が問題とされた「クリーブランド事件」を契機に法律を改正。親子が一時保護などで分離していても「子どもに対する親としての責任は親と自治体が共有する」「親は子どもとの交流や育児に参加でき、自治体はそれを支援する責任がある」と定めた。

 虐待による死亡事件が起きたり、明石市のような弊害が表面化したりするたびに高まる世論が一時保護の運用に大きな影響を及ぼす。保護期間中の親子の権利擁護を定めるなど手続きの明確化と、第三者によるチェックといった透明性の担保が早急に必要だと考える。

2020/11/15
 

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