連載・特集 連載・特集 プレミアムボックス

【特集】ニュース解く説く TOKTOK

  • 印刷
有識者会議であいさつする小林鷹之経済安保相(前列左端)=東京都港区
拡大
有識者会議であいさつする小林鷹之経済安保相(前列左端)=東京都港区
神戸新聞NEXT
拡大
神戸新聞NEXT
神戸新聞NEXT
拡大
神戸新聞NEXT
神戸新聞NEXT
拡大
神戸新聞NEXT

 最近のニュースで「経済安全保障」という言葉を耳にするようになりました。先端技術の開発を巡る国際競争が激化する中、経済的手段を用いて国益を追求するようになったことが背景にあります。岸田文雄首相は担当相を置き、来年の通常国会に関連法案の提出を目指す方針です。日本だけでなく、経済安保を巡る動きは他の主要各国、地域でも加速しています。(大久保斉)

■コロナ拡大で浮き彫り 医療用機器、マスク不足

 経済安全保障とは「わが国の独立と生存および繁栄を経済面から確保すること」(自民党新国際秩序創造戦略本部)を言います。国の存立に必要な製品を他国に頼らず自律的に生産して、有事に強いサプライチェーン(供給網)を整えたり、ITの高度化でサイバー攻撃のリスクが高まる中で、先端技術や個人の情報流出を防いだりすることを指します。自然災害や政変などに備えた事業継続への対応を含めて、経済安保は幅広い概念を含みます。

 身近なところでは、新型コロナウイルスの感染拡大で、マスクや医療用機器の不足が生じました。新興国の技術力向上で生産の分業が進み、サプライチェーンが世界中に広がる中で発生したパンデミック(世界的大流行)は、重要物資を自力で安定的に確保する経済安保の重要性を浮かび上がらせました。

■半導体など安定確保へ岸田内閣に担当閣僚

 政府は2020年4月、外交・安全保障政策の総合調整を担う国家安全保障局(NSS)に、「経済班」を新設しました。サイバーセキュリティー対策や官民が保有する先端技術・情報の流出防止に当たります。

 新設の背景には、米中両国の貿易摩擦や人工知能(AI)、第5世代(5G)移動通信システムを巡る覇権争いがあります。経済政策と外交・安保が密接に関わる事例が増えたことから、省庁の縦割りを排して経済安保に関する政策を企画・立案することにしました。

 岸田文雄首相も、先の自民党総裁選で経済安保の推進を公約に掲げました。今年10月に発足させた自身の内閣に担当閣僚を置くとともに、内閣官房に「経済安全保障法制準備室」を新設。安全保障上で重要な戦略物資や技術の確保に向けた政策を進めることにしました。

 折しも、以前から交渉が進められていた半導体受託生産の世界大手、台湾積体電路製造(TSMC)の日本誘致が決まりました。TSMCとソニーグループが総事業費8千億円で熊本県に工場を建設することになり、政府は4千億円程度の巨額補助を決定。関連費用を21年度補正予算案に計上しました。工場は22年に着工し、24年までの生産開始を目指します。

 政府が民間企業の投資に巨費を投じるのは、半導体不足への対応のほかに、国際市場で日本メーカーの存在感が低下していることもあります。1980年代後半に世界の半分を握った日本勢のシェアは徐々に下落し、2019年には10%まで落ち込みました。大型投資で先行した米国・韓国勢がシェアを伸ばし、半導体生産を請け負うTSMCの存在感も向上。TSMCの本拠である台湾に、中国が軍事的圧力を強めている状況下で、半導体確保の先行きに不透明感が生じつつありました。TSMCの国内誘致は、調達上の地政学リスクを軽減する狙いもあります。

 11月末には「経済安全保障法制に関する有識者会議」を立ち上げ、来年の通常国会に関連法案を提出する方針です。先端技術の開発や、半導体、レアアース(希土類)など戦略物資の安定調達に対し、政府が継続的に資金支援する枠組みが盛り込まれます。

■ハイテク分野支援へ各国が投資合戦

 世界の各国、地域も経済安全保障の確立に向けて、半導体の安定確保を中心としたハイテク分野への支援に動きだしました。米国は、バイデン大統領が議会に半導体関連投資を含む5兆7千億円規模の支援を要求。中国には、半導体産業向けに計10兆円超の基金があるといわれます。欧州連合(EU)も、半導体や量子コンピューターなどのデジタル分野に約18兆円を投じる戦略を発表しました。

 こうした中、経済安保でしのぎを削る中国は日本にとって最大の貿易相手国です。特定の原材料で中国からの調達に依存し、中国で事業展開する企業も少なくありません。経済安保は規制の側面もはらんでいて、同国を過度に神経質にさせて相互のビジネスに影響すれば、かえって国益を損なう恐れもあります。経済同友会は4月に公表した経済安保に関する提言で「官民の深い議論」を求めました。

 また、重要戦略物資の国産化、内製化を急速に進めようとすると、割安の輸入品が割高な国産品に置き換えられることでコスト高が生じ、経済活動にマイナスになるとの見方もあります。経済安保の推進には、コストや貿易への影響にも十分配慮する必要があるとの指摘も出ています。

2021/12/19
 

天気(7月1日)

  • 34℃
  • ---℃
  • 20%

  • 37℃
  • ---℃
  • 20%

  • 37℃
  • ---℃
  • 20%

  • 38℃
  • ---℃
  • 20%

お知らせ