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【特集】ニュース解く説く TOKTOK

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山崎峰夫氏
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山崎峰夫氏

 核家族化や晩婚化を背景に、子育ての際に身近な人からサポートを受けられず孤立する母親が増えています。こうした状況を受けて、育児不安や疲労の蓄積で抑うつ状態になる「産後うつ」や虐待などが社会問題化しており、自治体が出産後の母親を対象とする授乳指導や育児相談といった支援を行う「産後ケア事業」が、広がりを見せています。(佐藤健介)

■「ワンオペ育児」 不安や疲労蓄積

 産後の母親は心身とも非常に不安定です。知らないことだらけで思うようにならず、授乳も頻繁で眠れないことも少なくありません。不安や重圧、環境の変化に、ホルモンバランスの乱れも重なります。

 助けが必要なときに、周囲に頼れる人がいるとは限りません。両親が離れて住んでいる、里帰りしても高齢家族の介護で忙しい、夫が協力的でない…。母親だけが抱え込む「ワンオペ育児」に苦しみます。

 涙もろくなったり、気分が落ち込んだりして「マタニティブルーズ」に陥ることも。症状が続けば「産後うつ」が疑われます。意欲がわかず、思考力が落ち、いらだちや不眠の症状が出るほか、重症になると育児放棄や虐待に走り、発達に悪影響を及ぼします。

 産後うつは自殺の要因と指摘されます。国立成育医療研究センターなどのチームが、2015~16年に妊娠中から産後1年未満に亡くなった女性の死因を調べると、自殺が最多でした。

■産後ケア事業 授乳指導や相談、見守り

 こうした事態を防ぐため、助産師や保健師らが産後の母子の心身をサポートするのが「産後ケア」です。施設に泊まって体調を回復させたり、相談を受け付けたり、家を訪ねて授乳やおむつ交換など育児の方法を指導したりします。「母乳の出が悪く、子どもの体重が増えない」「泣きやまず、ママ失格だ」などと、自分を責める母親の心を癒やすのも重要な役割です。

 先駆けは民間でした。助産師が24時間態勢で助言と見守りを担う全国初の宿泊型施設「武蔵野大学付属産後ケアセンター桜新町」(東京)が08年に開業。現在は世田谷区が運営しています。12年に設立された一般社団法人「ドゥーラ協会」(同)は、友人ら身近な人の産前産後の世話をする専門職を養成します。

 行政が本腰を入れたのは14年。厚生労働省がモデル事業として始めました。市区町村が任意で事業を行い、民間委託も可能です。

 利用は、宿泊の場合だと、病院や助産所の空いたベッド、産後ケアセンターといった施設を数日間使うのが一般的です。1日当たり数万円かかるケースもありますが、自治体によっては独自の補助があります。

■来年4月に改正法施行 県内でもサポート拡充

 19年度に産後ケア事業を実施した市区町村は941で全体の5割超にとどまります。さらなる普及に向け、19年11月に実施を自治体の努力義務とする改正母子保健法が成立しました。21年4月に施行され、実施自治体が増える見込みです。

 法改正を踏まえ、神戸市が20年4月から利用できる施設や日数を増やし、阪神間の3市でも産後ケア事業が始まるなど、兵庫県内でも充実が図られています。また、利用者の負担軽減のため、厚労省は21年度から同事業の消費税を非課税とするよう求める方針を固めました。今後は資金面の対策だけでなく、ケアに当たるスタッフの量と質の確保、夫へのサポート体制の強化なども求められます。

    ◇    ◇

【教えて!先生】地域の第三者を頼って 兵庫県産科婦人科学会長・パルモア病院長 山崎峰夫氏

 出産直後は、睡眠不足やホルモンバランスの変化で精神状態が悪化しやすい。症状が悪化する場合は、産後うつを疑うべきだ。表情が乏しくなり、食欲も落ちると危険。うつになると、母子間の愛着が形成されず、育児放棄や児童虐待につながる上、自死の恐れもある。

 母乳の悩みを持つ母親も多い。ただ、多くの悩みは周囲のサポートで乗り切れる。赤ちゃんが寝ているときに母親も一緒に休ませる-という気遣いがよい授乳につながる。

 妊産婦の死因で自殺が病気を上回る研究もあり由々しき事態だ。育児が大変なときは父母だけで解決しようとせず、医師や助産師や保健師(行政)、NPO法人など地域の第三者に頼ることも大切。そのための産後ケア事業だ。

 ケアを充実させる鍵は、サポート施設に関わる助産師にメンタルを見極められるようトレーニングを積んでもらうこと。うつ状態の妊産婦は初めから病状を話すことはない。表情のわずかな変化から心の落ち込みを察することが必要だ。話をじっと聞くなど、できることはたくさんある。

 「私は支えられている」という実感が最も重要だ。子どもは社会の宝。医療や行政など多分野で協力し、母親が安心して子育てできる環境をつくらなければならない。

2020/12/20
 

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