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【特集】ニュース解く説く TOKTOK

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地元産のシャインマスカットなどが出品された三木市ぶどう品評会=2019年、三木市役所
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地元産のシャインマスカットなどが出品された三木市ぶどう品評会=2019年、三木市役所
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 イチゴの「紅ほっぺ」やブドウの「シャインマスカット」など、国内の農家が品種改良を重ねて作り上げた高級フルーツは海外でも人気を呼び、日本の農業の新たな強みとして期待されています。ところが最近、中国や韓国でもこうしたフルーツが生産され、タイや香港などに輸出されて安く売られる例が相次いでいます。日本から無断で苗が持ち出されているためで、国内の栽培農家にとっては大問題です。こうした事態を防ぐことを狙う改正種苗法が昨年12月に臨時国会で成立し、今年4月1日から施行されます。ところがこの法律には、農業関係者などから反発の声が上がりました。一体なぜでしょうか。(論説委員 藤井洋一)

■開発者の権利を保護 改正種苗法で持ち出し規制

 コメや麦、野菜、果樹などの農作物には、品質や丈夫さに改良を加え農林水産省に登録した「登録品種」と、それ以外の「一般品種」があります。

 品種改良には手間も費用もかかります。シャインマスカットを例に取れば、作りやすく味もよいマスカットを目指して親となる品種を開発したのは1973年でした。それから33年かけ、ようやく新品種として登録するに至ったのです。

 工業製品の実用新案や特許と同様に、農産物についても開発者の権利やその保護を明確にするのが、農水省が改正種苗法を成立させた狙いのようです。

 改正法では登録品種について、育成する地域や開発者の許可なく持ち出すことを厳しく規制しています。農家に対しても、収穫した農作物から取った種を再びまく「自家増殖」について、登録品種の場合は開発者の許可を求めるように義務付けました。

■「自家増殖」も許可制に 農家から反発の声

 農家の反発を呼んだのは、この自家増殖の規制です。登録品種の種や苗がどのように流通しているかを把握するのが規制の狙いとしていますが、長年、自家増殖した種を使って生産してきた農家が、開発者に許可を求めなければならなくなると、煩雑な手続きが必要になるだけでなく、新たに料金を求められる可能性もあるからです。

 登録品種はごく少数だから多くの農家には関係ありませんよ、と農水省は説明しています。しかしそれは農作物の種類によって違います。

 農水省の説明では、コメの品目の8割以上が一般品種です。しかし新潟県や青森県では寒さに耐える特性に改良された登録品種が作付面積の大半を占めます。北海道の小麦や大豆も同様です。こうした点についても「農業の実情を知っているのか」との批判が集まりました。

 政府は当初、昨春に通常国会でこの法律を成立させる予定でした。ところが内容を知った俳優の柴咲コウさんがSNSに「このままでは日本の農家が窮地に立たされてしまいます」などと投稿したことから社会全体の関心が高まり、疑問や反発が相次ぎました。そのため、昨年末の臨時国会まで先送りされたのです。

 三重県や札幌市など農業が盛んな地域では、地元議会が慎重審議を求める意見書を採択するケースも目立ちました。

■4月施行、効力は国内限定 海外でも品種登録必要

 最終的に昨年12月の臨時国会で改正法は成立しましたが、種や苗を適正な価格で安定供給し、農業者に制度見直しの内容を丁寧に説明することなどを政府に求める付帯決議も採択されました。

 委員会審議では野党の党首が自ら質問に立つ場面もあり、国民生活の根底を支える農業に深くかかわる問題として各党が捉えていることがうかがえます。

 ただこの法律が施行されても、国内で無許可持ち出しが規制されるだけです。実際には、小さな苗を持ち出して運ぶのは物理的に簡単なので、日本の貴重な苗木が海外に流出しなくなるかどうかは見通せません。

 効果をあげるには国内対策だけでは不十分です。海外でも品種登録をしておかないと、たとえ流出した苗木が栽培されたとしても日本の開発者の権利は主張できません。これまで海外に流出した日本産の改良品種には、この登録を行っていない例もありました。

 後継者不足に苦しむ日本の農業にとって、海外でも引き合いの多い高級品種を増やすことは若い人を呼び込むためにも不可欠です。

 そのためには、開発者の権利を守りながら農業の活性化につながるよう、種苗法が適切に運用されることが重要です。しっかりと見守る必要があります。

【シャインマスカット】欧州系と米国系の交配を重ねて生まれた新品種。大粒で糖度が高く、種がないので皮ごと食べられる。栽培しやすく日持ちもよい。生産地は山梨、長野、岡山など全国に広がり、兵庫県内でも神戸、三木、加西などで栽培されている。

2021/1/24

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