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【特集】ニュース解く説く TOKTOK

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阪神・淡路大震災後、ビル解体現場近くでは粉じんが舞い、マスクなどで口を覆う人たちもいた=神戸市中央区(1995年1月31日)
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阪神・淡路大震災後、ビル解体現場近くでは粉じんが舞い、マスクなどで口を覆う人たちもいた=神戸市中央区(1995年1月31日)
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 阪神・淡路大震災から25年が過ぎ、被災地で飛散したアスベスト(石綿)による健康被害が懸念されています。兵庫県はかつて石綿を扱った工場が多く、2005年には尼崎市のクボタ旧神崎工場の労働者や周辺住民らの被害が明らかになった「クボタショック」もありました。今後の課題を調べました。(小林伸哉)

■潜伏期間、十数年から50年

 石綿は断熱、耐火、防音といった特性があり、安価だったため、建設資材など約3千種類もの製品になったといい、公営住宅や学校の建築にも使われました。規制前はドライヤー、ストーブ、化粧品など身近な物にも使われました。中高年の人なら理科の実験で石綿付き金網(05年に廃棄指示)を使った記憶があるのでは?

 石綿は繊維状の鉱物で、ほぐすと髪の毛の5千分の1という細さ。肺に吸い込むと、中皮腫、肺がん、石綿肺などを引き起こします。発症までの潜伏期間は十数年から50年程度とされ、「静かな時限爆弾」とも呼ばれます。

 世界的に1960年代までに発がん性や疾患との因果関係を示す医学的知見が確立されましたが、日本では高度経済成長期から世界有数の多量の石綿が使われ続けました。輸入や使用が禁止されたのは2000年代で、06年にようやく建物への吹き付けなどができなくなりました。しかし、それ以前の建物には石綿使用の恐れがあり、今も建物内に大量に残っているのです。

■極めて短い吸引でも中皮腫発症事例

 日本では中皮腫の死亡者数は95年は500人だったのが、2015年以降、3倍の1500人台に増えています。肺がんは石綿との因果関係が見逃されがちで、専門医らの国際会議は「石綿起因の肺がん患者は中皮腫の2倍発生する」と指摘。国内で石綿関連疾患の犠牲者は数十万人に膨らむとの報告もあります。用途が多様だったことから、関連疾患の労災認定は、石綿製品製造のほか港湾、造船、自動車整備、輸送、看護師、研究職など幅広い職種に及んでいます。

 クボタショックで、石綿飛散による住民の被害(環境暴露)にも注目が集まってきました。

 阪神・淡路では、建物の倒壊やずさんな解体で大量の石綿が飛び散りました。熊本学園大の中地重晴教授が震災翌月に行った調査では、神戸市東灘区の解体現場近くで大気1リットルあたり約250本(住宅地の全国平均値は0.15本)が確認されました。中地教授は「今後、被害者が増える恐れがある。解体作業者や住民に健康管理手帳を配る登録制度が必要」と訴えます。

 阪神・淡路の復旧作業などに当たった少なくとも5人が石綿関連疾患で労災や公務災害に認定されました。14年に悪性胸膜中皮腫で亡くなった元警察官=当時(72)=は神戸市長田区で約1カ月間の警戒・救護に従事し、労災認定されました。極めて短い吸引での発症で、被災地の危険性を示しています。専門家は「ボランティアや通勤通学で街を歩いた人も危険性がある」と警告し、国に無料診断の徹底を求めています。

■防じんマスク 災害前に備えを

 近い将来、南海トラフ巨大地震などが起き、石綿を使った建物の倒壊や解体で大量に飛散する恐れがあります。石綿除去を進める一方、行政や市民による防じんマスクの備蓄、被災地での着用励行が求められています。

 平時の飛散防止も重要です。国土交通省は石綿を使った建物の解体ピークを28年ごろとみており、適切な解体を義務づける法整備などが欠かせません。

 救済・補償の充実も課題です。14年の大阪・泉南訴訟最高裁判決を踏まえ、国は1958年5月~71年4月に石綿粉じんを吸う作業に就き、関連疾患となった労働者と遺族らを対象に、提訴されれば和解し、最大1300万円の慰謝料などを支払っています。ただ、情報不足などから提訴できていない人も少なくありません。クボタショックのように労働以外で石綿関連疾患を発症した住民は、独立行政法人環境再生保全機構が救済・給付を担っていますが、労災に比べて支給額の水準が低いとされています。

 石綿被害は潜伏期間が長いため原因特定や責任追及の難しさがつきまとってきました。被害者を幅広く救う取り組みが急務です。

2020/1/26

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