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わが町の文化財

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市内外から参拝客が絶えない「慶明しばり地蔵」=神戸市西区平野町慶明字東原
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市内外から参拝客が絶えない「慶明しばり地蔵」=神戸市西区平野町慶明字東原
慶明しばり地蔵
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慶明しばり地蔵

 稲穂が垂れ始めた田んぼのはずれに、柔和な表情のお地蔵さんが腰かけていた。花こう岩でできた像は、台座から舟形の後背までの高さが146センチある。地蔵にしては大きく、堂々としている。

 鎌倉時代後半の作と推定されている「慶明しばり地蔵」。胸のあたりを十数本の縄やひもが縛りつけている。その様子から、呼び名がついたそうだ。

 「なぜ縛るのだろうか」

 神戸市文化財課による案内板を読む。

 隣の小さな池に白蛇(はくじゃ)が住んでいた。そこでこの地は聖地とされ、地蔵がまつられたのだという。21日間、ひもなどで地蔵を縛って願をかければ、かなうと言い伝えられている-。

 白蛇は古くから生命の源とされる。その生命力にあやかろうと、病気の平癒を願う人々が、地蔵をしばった。その風習は今も続いている。

 「地元の神戸だけではなく、加古川や加西、社(加東)から参拝する人もいるんですよ」。約20年間、地蔵を守ってきた慶明老人クラブの吉川孝(こう)さん(83)が教えてくれた。「重病の子どもさんのために、お参りにやってきた男性もいました」

 63歳まで看護師として働いてきた吉川さんは、病に悩む人の気持ちが痛いほど分かる。共感が、地蔵の世話をさせてきた。

 あらためて地蔵に目をやる。赤い帽子はきれいに洗濯され、花や水が供えられている。

 8月23、24の両日、営まれた夏の地蔵盆には、市内外から子どもたちが集まった。吉川さんは、子らにお菓子を配った。

 「地蔵は病気を治してくださるだけでない。子どもさんの健康も守ってくださっていると思います」。そう言って吉川さんは相好を崩した。(津谷治英)

◆メモ

★慶明しばり地蔵

踏み下げた左足を小蓮台(れんだい)で受ける「半跏趺坐(はんかふざ)踏み下げ」の石仏。背面から鼻先までの厚さは約22センチと分厚い。14世紀前半の石仏としては良好な状態で、神戸市は2002年、有形文化財に指定した。
【アクセス】 第二神明道路玉津ICから車で5分

2015/10/6
 

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