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 兵庫県立神戸高校の元校長で、県教育次長を務めた国語教諭の溝口繁美さん(61)=神戸市垂水区=が、定年退職後の昨年春から、俳人松尾芭蕉の紀行文「奥の細道」に記された道を歩いて巡っている。東京から東北、北陸を経て岐阜に至る約2400キロ。東日本大震災の被災地に「寄り添い続けたい」と思ったことがきっかけだ。現地の人たちと交流し、芭蕉のように俳句や心情を書きとめながら名作の舞台をたどる。

 奥の細道は、芭蕉が1689年に約5カ月かけて旅した足跡を、俳句とともにまとめた紀行作品。溝口さんにとって、古典の授業の「必須教材」だ。

 溝口さんは、県立尼崎、長田、神戸高塚高校で計17年勤めた後、指導主事として県教育委員会事務局へ。教育次長などを担い、2015年3月、神戸高校で定年を迎えた。

 指導主事1年目、阪神・淡路大震災が起きた。教え子や同僚が家族や家を失い、自身は避難所になった学校の手伝いに奔走。県外からの励ましや支援が、前に進む力になった。

 教育次長の時、東日本大震災が発生。宮城県の沿岸部を訪れ津波被害の大きさを目の当たりにし、神戸高校に移ってからは生徒と何度もボランティアで同県に足を運んだ。

 定年後は岩手、宮城、福島の被災3県を通る奥の細道を巡り、気持ちを寄せ続けようと決めた。インターネットで経験者の情報を調べ、行程を計画。新暦で芭蕉と同じ出発日となる昨年5月16日、歩き始めた。

 何度か神戸に戻りつつ、短くて3日、長い時は9日連続で歩く。300年以上前の経路を意識し、整備された国道などではなく、旧道や道なき山の中を選ぶ。荷物は着替えやデジタルカメラを入れたリュックサック一つ。ノートを携え、1日の距離や立ち寄り場所を毎晩、宿でつづる。

 昨年10月に訪れた宮城県石巻市。茶色い更地が広がる。人々が津波から逃れた日(ひ)和(より)山(やま)に芭蕉の句碑があった。溝口さんも句を詠んだ。

 〈日和山 命の山に 言葉なし〉

 同市内のすし店では、夫と共に切り盛りする中年女性と話が尽きなかった。「津波で店は水に漬かったけど、流されずに済んで」「神戸も地震の後は大変だったでしょう」

 これまでに歩いた距離は約千キロ。今年中に最終目的地の岐阜県大垣市を目指す。旅の記録は冊子にまとめ、友人らに贈るという。

 溝口さんは「教室でしか触れたことがなかった道だが、自分が歩く意味をかみしめながら最後まで続けたい」と話す。(宮本万里子)

2016/2/2

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