記事特集
阪神・淡路大震災当時は若手だった兵庫県警の警察官らが「語り部」となり、後進を育成している。阪神・淡路後に採用された警察官が7割近くに達する中、東日本大震災の被災地でも活動した一人は「現地の状況は災害ごとに異なる。そこで何ができるか日々考えてほしい」と訴える。22年前の1995年1月17日、突然の災害にたじろいだ自身を振り返りながら-。(田中陽一)
【明石署の篠原警部 「災害現場 冷静に状況把握を」】
明石署の篠原督征(まさゆき)警部(43)は当時、姫路署に勤務。拝命3年目だった。住んでいた寮の警察官に招集がかかり、県警のバスで姫路から神戸に向かった。
須磨の辺りから光景が一変した。立ち上る黒煙。折り重なる民家。渋滞で進まないバスに駆け寄り、救助を求める被災者もいた。「自分に何ができるのか」。見たこともない現実に息をのんだ。
最初の任務は神戸市灘区での救助活動。自前の道具はスコップだけだったと記憶している。倒壊家屋に潜り込もうとした瞬間だった。余震に襲われ、先輩から急に足を引っ張られた。「自分の命を守れっ」。救助に無我夢中で、自分の安全を考えていなかった。
救出した約10人は、全員亡くなっていた。「もっと早く外に出せていれば」。しばらくすると、犠牲者の顔が脳裏に浮かぶようになった。
間もなく機動隊に異動となり、神戸で8月ごろまで活動。その後も2度の同隊勤務で救助訓練を積み、2011年3月の東日本大震災では広域緊急援助隊として岩手県釜石市へ。現場は想定外だったが、津波の再来に備え、捜索活動中に待避可能な建物をチェックする冷静さも身につけた。22年前、救助現場で先輩に怒鳴られた理由も今なら分かる。
語り部として若手に伝えるのは実践的な教訓だ。マスクやゴーグルがあるだけで救助活動の効率が上がること、家族を残して被災地に向かう場合に備え、事前に準備しておくこと…。そしてもう一つ。「兵庫」に寄せられる期待の高さだ。
「釜石では現場を一任されたこともあった。経験とノウハウをしっかり引き継ぎたい」
◇ ◇
【葺合署の藤原警部 「ノコギリ1本あれば救えた」】
当時、拝命12年目の30歳だった葺合署の藤原克也警部(52)も語り部の一人。須磨署で宿直中だった。救助を求める電話がひっきりなしに入り、署員の呼び出しもままならない。
被災者がつめかける中、青ざめた表情の夫婦が駆け込んできた。父親の腕には10歳ぐらいの男の子。母親は「子どもの様子がおかしい」と訴えた。
「病院に行きましょう」。すぐにパトカーを準備し、案内しようと男の子を抱いたとき、異変に気付いた。既に硬直が始まっていた。「もう…」とは口に出せず、そのまま病院へ。医師が死亡を告げ、廊下に並ぶ遺体の列に加えた。「ごめんな」。そう声をかけるしかできなかった。
須磨署管内では約400人が亡くなった。幼い子をかばうようにして冷たくなっていた母親、婚約した彼女に覆いかぶさっていた男性…。当時、署内に救助用資機材はほとんどなく「この柱を切ることができれば、という現場も多かった。せめてノコギリ1本あれば、救えた命もあったのでは」と思う。
13日には葺合署の朝礼で、経験を語るつもりだ。(鈴木雅之)
■兵庫県警の「語り部」■ 阪神・淡路大震災の経験と教訓を組織内で引き継ぐため、2008年に始まった。当初は県警側が指名した警察官が務めていたが、12年からは公募に切り替え、現在は東日本大震災の被災地で活動した12人を含め43人が登録。毎年1月を中心に、警察学校やそれぞれが所属する警察署で体験を語っている。
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