わかる!ナットク
芸術の秋-。京阪神の美術館や博物館でも「国宝展」「北斎展」「大エルミタージュ美術館展」など、話題の展覧会がめじろ押しだ。ただし、これらはテーマや期間を設定し、企画された「特別展・企画展」。これらとは別にミュージアムには、いつ訪れても鑑賞できる「常設展」があるのだが注目されることは少ない。一体違いは何だろう。(堀井正純)
-そもそも「常設展」って?
「館の所蔵品や、所有者から保存・管理を任された寄託品を常時公開しているのが常設展。所蔵品展と呼ぶこともあるんだ。多くが特別展に比べて入場料もずっと安い。多くの公立館では、常設と企画展示のスペースが分けられているよ」
-特別展・企画展は。
「『ボストン美術館展』『印象派展』『ピカソ展』『若冲(じゃくちゅう)展』など、海外の有名美術館の収集品を借りたり、人気画家らの作品を各地から集めたりし、会期を定めて展示する場合が多い。日本の館での集客は、興行的な特別展頼み。ただ、たいていは自館の所蔵品以外で構成するので、企画・調査や交渉に、時間も手間も費用もかかる」
-海外ではどうなの。
「欧米は常設展も人気が高い。著名な館には看板といえるメジャーな作品があり、所蔵品は質・量ともにハイレベルだ。大英博物館の『ロゼッタストーン』、仏・ルーブル美術館の『モナ・リザ』『ミロのビーナス』、オルセー美術館の印象派の名画など、自館の所蔵品が常設展示され、世界中から観光客がコレクションを目当てに訪れているよ。日本でも、岡山・倉敷の大原美術館などは優れた所蔵品の常設展示がメインなんだ」
-兵庫県内の常設展は?
「神戸市立博物館の国宝『桜ケ丘銅鐸(どうたく)』や、県立美術館にある神戸出身の洋画家・小磯良平の名作『斉唱』は、ほぼいつでも見ることができるよ」
-神戸市博には教科書でもおなじみの「聖フランシスコ・ザビエル像」があるね。
「重要文化財で、作品保護のため、展示は年間60日以内と決められているんだ。紙や絹が素材の日本や中国の絵画は、西洋の油彩画や彫刻と違って光や温湿度変化に弱く劣化しやすい。館所蔵品でも常時展示はできないので、日本の場合は常設展よりも、期間を決め、作品を入れ替える所蔵品展の開催が大半を占める」
-常設展示でおすすめの館は?
「関西なら奈良国立博物館が仏像の名品を堪能でき、大阪・千里の国立民族学博物館では世界各地の民族資料に圧倒されるよ。兵庫県立美術館の所蔵品展も、毎回ユニークな切り口を工夫している。東京なら、神戸ゆかりの「松方コレクション」がある国立西洋美術館や東京国立博物館。両館とも、一部作品以外は、個人で楽しむ場合に限って写真撮影も可能なんだ」
2017/10/28