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兵庫県畜産技術センターが管理する但馬牛の精液の凍結タンク。精液が入った数多くのストローが保管される(兵庫県提供)
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兵庫県畜産技術センターが管理する但馬牛の精液の凍結タンク。精液が入った数多くのストローが保管される(兵庫県提供)

 和牛の精液や受精卵を中国に不正に持ち出したとして、家畜伝染病予防法違反の疑いで、徳島県の牧場経営者ら3人が大阪府警に逮捕されました。国内の畜産農家はおいしさを極めようと、高品質の肉となる牛を選抜し、増やしてきました。その最高峰が「神戸ビーフ」になる但馬牛(うし)です。兵庫県の畜産農家は「大切な遺伝資源(精液や受精卵)が国外に流出すると大打撃を受けかねない」と危機感を募らせています。その訳とは-。(山路 進)

 -どうして牛の精液や受精卵が大切なの?

 「牛は親と顔や体格、肉質が似る。国内の畜産農家は、高品質の肉となった牛の父牛と母牛を確認し、そうした牛同士の交配を繰り返すことで、良い肉となる血統を残してきた。だから、今のおいしい牛肉になる和牛がいるんだ。神戸開港の頃から続く『神戸ビーフ』になる但馬牛の生産者は、この家畜改良と呼ばれる作業を150年以上続けてきたんだ」

 「昭和の初頭には人工授精技術が導入された。この技術で使われるのが雄牛の精液。より良い牛を残そうと代々選ばれてきた牛の精液は、神戸ビーフをはじめとする和牛の歴史、技術の結晶なんだ」

 -どうして海外に流出するといけないの?

 「和牛は、家畜改良を積み重ねて開発した『日本の宝』。一朝一夕ではつくれなかった。ところが今は、凍結保存するストロー入りの精液(0・5ミリリットル)を使うことで、短期間で高品質な肉質の牛を産ませることができる。技術革新により、和牛の受精卵があれば、乳用牛の雌に和牛の子牛を産ませることもできる。たった1代で和牛が誕生するんだ。メーカーなどの企業秘密と同じで、遺伝資源は畜産業界の重大機密といえるだろう」

 -海外でも「WAGYU(わぎゅう)」がいるって聞いたけど…

 「1991年から米国にだけ生きた牛や遺伝資源の輸出が認められたんだ。畜産業界は流出を食い止めようと、輸出自粛を呼び掛けたけれども、98年までに247頭、精液1万3千本が海を渡った。中には但馬牛系の牛もいた。その後、自粛が徹底されたことや、(発生農場の牛全頭の処分が義務付けられる感染症の)口蹄疫(こうていえき)が日本で発生したことから輸出されなくなった。ただ、米国には、輸出された牛や精液をもとに繁殖した牛が約5千頭もいる。米国から輸出されるなどしオーストラリアにも約3万6千頭いて、韓国や中国などに輸出されているというよ」

 -もう流出を食い止めても無駄なのかな?

 「それは違う。農家や業界は今も改良を重ね、さらに上質の牛肉を追究し、その価値はどんどん高まってる。中でも、全国の和牛の99%以上がその血を受け継ぐ雄の但馬牛は、その改良や管理を兵庫県が担っている。精液を採取する雄牛は6歳以上の12頭のみで、その候補になる雄牛が1~5歳の各年齢で7頭いる。雄牛は県内で年約5千頭も生まれるから、選ばれるのは『超優等生』だ」

 -牛の遺伝資源の流出対策は?

 「国は、国外への持ち出しを認めていない。ところが、今回の事件は出国時に必要な検査を受けておらず、中国での入国審査で発覚した。警察の調べでは、逮捕された牧場経営者らは中国に精液などを複数回持ち出したとされる。但馬牛生産者の男性は『生産者として問題外の行動。今回は規制をくぐり抜けられており、国内での管理をもっと厳しく取り締まるべきだ』と話していた」

【家畜伝染病予防法】口蹄疫(こうていえき)など家畜伝染病の予防や感染拡大防止について定めた法律。家畜などを輸出する際、動物検疫所で検査を受け、証明書の交付を受けることを義務付けている。違反に対しては、3年以下の懲役または罰金100万円以下の罰則がある。和牛の受精卵などの輸出入を直接規制する項目はない。

2019/4/13

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