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一人娘を供養する橋本昭一さん、茂子さん夫妻。僧侶の存千夏子さん(右)が寄り添う=17日午前、神戸市灘区中郷町3(撮影・小林良多)
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一人娘を供養する橋本昭一さん、茂子さん夫妻。僧侶の存千夏子さん(右)が寄り添う=17日午前、神戸市灘区中郷町3(撮影・小林良多)

 寂しいで。帰ってこおへんからな-。神戸市灘区中郷町3、橋本昭一さん(87)、茂子さん(82)夫妻は17日朝も、いつものように仏壇に手を合わせ、一人娘の佳代子さん=当時(26)=を思い浮かべた。読経が流れる。寄り添う僧侶は、24歳の存(たもつ)千夏子さん。夫婦の寂しさを和らげ、心の支えになっている。(阿部江利)

 存さんは、近くの円通寺の僧侶。震災でこの寺も全壊、3歳のときだった。3年前、祖父と父が相次いで亡くなり、父を引き継ぎ、月命日には必ず橋本さん方を訪れる。

 亡くなった佳代子さんは、結婚10年目で授かった一人っ子だった。幼いころから優秀で「親に似んと、ええ子ができた」と喜び合い、3人であちこち旅行した。

 就職4年目だった1995年。正月は、佳代子さんが初めて一人で作ったおせち料理を3人で食べた。1月16日、佳代子さんは夜遅く帰宅し、家族で言葉を交わさないまま、激しい揺れに襲われた。

 「お母さん、怖い」。あの瞬間、茂子さんは叫び声を聞いた。夫婦は5時間後、倒壊した自宅から救出されたが、佳代子さんは息絶えていた。

 18日、遺体安置所に同僚男性が訪ねてきた。寄り添う昭一さんに「近々結婚のあいさつに来ようと思っていました」と打ち明けた。「恋人がおったんか。死んでしもては、嫁にやれんやないか」

 夫婦2人の生活。泣いても悲しみが募るだけ。娘の名前すら口にしなかった。震災前、何度も古い家を建て直そうと思っていただけに、昭一さんは今も心残りが消えない。

 誰かが手を合わせに来るたび、少しずつ幸せな記憶が戻った。旅先ではしゃいだ笑顔、成人式の晴れ姿…。朝晩2人で祈る。今は夫婦で懐かしみ合えるようになった。

 震災から丸21年となったこの日、茂子さんは娘のセーターを着て仏前に座った。存さんに声を合わせ、お経を上げる。昭一さんは存さんに遺影を見せ、「海外旅行が好きな子でね。旅行中の写真なんですよ」。存さんは静かにうなずいた。

2016/1/18

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