記事特集
阪神・淡路大震災で住まいを失った被災者のため、兵庫県や被災5市が都市再生機構(UR)などから20年契約で借りた「借り上げ復興住宅」が9月末から、順次返還期限を迎える。建設するよりも早く住宅を用意できたため、約8千戸が供給され、現在も約5700戸がある。期限が過ぎると入居者の多くが転居を求められる。高齢者ほど引っ越しの負担は大きいが、対応は自治体ごとに異なり、不安の声は消えない。借り上げ住宅問題とは何なのか、あらためて考える。
(阿部江利、高田康夫)
【計5700戸、9月末に西宮の1棟】
最も早く9月末に返還期限を迎えるのは、県内で一番最初に入居が始まった西宮市の「シティハイツ西宮北口」。同市は1995年10月、都市再生機構(UR)から1棟124戸を借り上げ、被災者に供給した。同市は計5棟447戸を借り上げ、他の4棟も2017年度に期限が迫る。
同市は当初、借り上げた住宅を買い取る方針だったが、想定よりも費用が高額になることなどから、12年に買い取りや入居の継続はせずに、20年間で返還する方針に変更した。同市は市営住宅が適正数よりも多いとして削減方針を打ち出し、借り上げ住宅も対象にしている。
さらに、同市は県内で唯一、要配慮世帯でも継続入居を認めていない(転居先が見つかるまで最長5年の猶予あり)。11年度末に115世帯だったシティハイツの入居者は、市営住宅などへの転居が進み、15年8月末には18世帯まで減った。うち7世帯は弁護士と委任契約をし、入居継続を求めている。
【借り上げ住宅Q&A】
Q 借り上げ復興住宅とは何か
阪神・淡路大震災で家を失った被災者のため、自治体が民間や都市再生機構(UR)からマンションなどを借り上げ、提供した復興住宅のこと。民間住宅は、市営住宅より家賃が高い場合が多いが、被災者が同水準の家賃で住めるように国や自治体が差額を負担し、所得に応じた減免もある。兵庫県と神戸、西宮など5市が復興住宅に借り上げを活用した。
Q なぜ、必要だったのか
震災後、自治体は短期間に何万戸という住宅を用意する必要に迫られたが、都市部では土地や予算の確保が難しかった。被災者に少しでも早く落ち着ける場所を提供するため、新たに建設するだけでなく、民間マンションなどを借り上げ、復興住宅として提供することにした。新築よりも初期投資が安く済む利点もあった。
Q なぜ、期限があるのか
自治体とマンションの所有者が、当時の法律で認められた最も長い入居期間の20年を限度に契約を結んだためだ。法律はその後改正され、20年の期限を越えてもよいことになっている。
Q 何が問題となっているのか
自治体は入居者に対し、借り上げ期限を根拠に転居を求めているが、20年の期限があることを知らない人もいた。特に1996年に借り上げ住宅が法律で位置付けられる前に入居した西宮、神戸市のマンションでは民間の契約書に当たる入居許可書に期限が記載されておらず、住民の戸惑いは大きい。
退去に伴う引っ越しで、20年かけて培われた住民同士のつながりが失われ、転居先で孤立してしまうとの不安の声は強い。高齢者や障害者らは引っ越しに伴う負担が特に大きくなることが予想されるが、対応は自治体によって差があり、公平さを問う声も上がる。
Q 期限が来たらどうなるのか
期限後も住み続けられるよう訴えている住民もおり、弁護団が結成されて支援している。一方、西宮市はこれ以上の協議には応じない構えで、最終的には裁判になる可能性もある。
▼東日本大震災被災地は石巻市の149戸のみ
東日本大震災の被災地では、借り上げ手法による復興住宅の提供は少ない。岩手、宮城、福島の3県によると、借り上げによる災害公営住宅を提供しているのは宮城県石巻市のみ。福島県は「国の補助が高率で、財源が確保できているため、必要性がない」とする。
一方、石巻市は整備を計画する災害公営住宅4500戸のうち、149戸を民間から借り上げ、今後も、みなし仮設住宅を含む民間賃貸住宅の住戸部分を戸別に借り上げる方針だ。担当者は早期の提供や初期費用の低減、将来的な過剰ストックの解消などを理由に挙げ、「兵庫県で問題になっていることは聞いており、公募の際に転居が必要な点などは説明し、契約書でも書いている」としている。
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