連載・特集 連載・特集 プレミアムボックス

記事特集

  • 印刷
放課後の学習を支援する大学生=神戸市内
拡大
放課後の学習を支援する大学生=神戸市内

 阪神・淡路大震災から間もなく20年になる。生まれた子どもが成人するまでの年月、私たちの社会はどんな道をたどり、何を育んできたのだろうか。震災から立ち上がり、地域の課題に挑み続ける人たちがいる。その歩みから、共に支え合う「市民社会」の未来を考えたい。

        ◇

 放課後、私服に着替えた中学生たちが“教室”に集まってくる。約2時間、計算ドリルや英語、数学の問題集に集中する。指導するのは大学生ボランティアたちだ。

 神戸市が生活保護世帯の小中学生を対象に灘、須磨区で実施する学習支援事業。NPO法人ブレーンヒューマニティー(BH、西宮市)が事業委託を受け、学生ボランティアの募集と研修、教室運営、保護者を交えた進路相談などを担う。

 日本は17歳以下の6人に1人が貧困状態とされ、その連鎖をどう防ぐかは重要な課題だ。経済的な事情で塾など学校外の学習機会に恵まれない子どもたちに、高校進学の学力をつけてもらう。学習支援の専門性を持つNPOの果たす役割は大きい。

【問われる課題解決力】

 BHは震災前年の1994年に関西学院大生らが結成した家庭教師派遣サークルが前身だ。震災を機に学習支援や自然体験など学生ボランティアが被災地の子どもを支える多彩な活動を展開してきた。その後、支援の対象は不登校の子どもへの学習支援や居場所づくりへと広がる。目の前の子どもたちを通して社会の課題に向き合ってきた結果といえる。

 学生スタッフの問題提起から、貧困問題に取り組むと決めたのは5年前。生活保護世帯の子どもが塾や習い事に通う資金として寄付を募り、クーポンの形で手渡す「バウチャー」方式を考案した。使う先は子どもが選び、学習塾など地域の事業者にお金が回る仕組みだ。

 この方式は新たな公益社団法人に引き継がれ、東日本大震災後は東北の被災者に対象を広げた。過去5年間で企業や個人の寄付総額は2億2千万円を超え、利用者は延べ578人に上る。クーポンで予備校に通って大学に現役合格し、来春の卒業を前に就職が内定した人もいる。

 創業メンバーでBH理事長の能島裕介さん(38)は「NPOが新たな領域に挑戦するだけで認められた時期は過ぎた。今は課題解決の力が問われている」と気を引き締める。

 2年前から大阪市がバウチャーを使った「塾代助成事業」を導入した。神戸市のような教室型の学習支援の委託は県内7カ所に増えた。

 NPOなど「新しい公共」の担い手が課題を見つけ、解決策を示す。それを行政が採用する。そのサイクルが少しずつ回り始めている。

 震災を機にボランティアの重要性が認識された。98年に特定非営利活動促進法(NPO法)が施行され、現在は全国で4万法人を超える。

 県内のNPO法人認証数は7月末で2037で、都道府県で4番目に多い。介護、生活支援など保健福祉分野が約6割。震災を機に発足した団体の多くはリーダーや会員の高齢化、資金不足などの課題を抱える。

 地縁組織が細りつつある今、地域に根を下ろし、信頼される地道な市民活動が求められている。

【地域の信頼を大切に】

 NPO法人福祉ネットワーク西須磨だんらん(神戸市須磨区)の歩みがヒントになる。98年の設立以来、掃除や食事作り、庭仕事など介護保険対象外の在宅福祉サービスを手掛けてきた。利用料は原則1時間千円、サービスを提供するワーカーは700円を受け取る。

 日埜昭子理事長(72)は「自転車で行き来できる範囲で、困った時に助け合う仕組み」を目指し、高齢者らの居場所づくりにも取り組んできた。地域で暮らす者同士、気兼ねやなれ合いがないよう互いを尊重する活動のルールを徹底している。その姿勢が信頼を得て、自分もできることをしたいと申し出る住民や寄付に応じてくれる人も増えてきた。

 来年度から介護保険制度の大幅な見直しが始まる。「制度が変わっても、必ずその外に別の課題が生まれる」と日埜さん。

 地道に課題解決に挑み、自らも変革を続ける。市民活動は臨機応変に新たな形を模索する段階に入った。

2014/10/17

天気(8月6日)

  • 33℃
  • 26℃
  • 10%

  • 38℃
  • 22℃
  • 10%

  • 35℃
  • 26℃
  • 10%

  • 36℃
  • 26℃
  • 10%

お知らせ