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DVD初披露の場で、学生たちと制作過程を振り返る崔敏夫さん(右)=神戸市中央区港島1、神戸学院大学
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DVD初披露の場で、学生たちと制作過程を振り返る崔敏夫さん(右)=神戸市中央区港島1、神戸学院大学

 阪神・淡路大震災で息子を亡くした男性の思いを1年半掛けて追ったDVDを、神戸学院大学の学生12人が完成させた。男性と交流を続ける中で、親子のような関係に発展し、制作過程そのものが「学びの場」になった。今後、小中学生向けの教材として活用する。

(上田勇紀)

 同大学の舩木伸江准教授(防災教育)のゼミ生12人が、授業の一環で、神戸市須磨区千歳町に住む崔敏夫さん(73)の経験を聞き取った。

 崔さんは震災で二十歳の次男秀光さんを亡くした。学生たちは、震災を直接知らない。学校の追悼行事などを通じて学んだだけで、遺族から話を聞くのは初めてだった。

 学生は崔さんの自宅を訪れ、秀光さんの遺影の前で当時の状況を聞いた。成人式のため東京から帰省していた秀光さん。1月16日に帰る予定だったが、風邪気味だったため、崔さんが引き留めた。その数時間後、激震で自宅はつぶれ、帰らぬ人になった。崔さんは「涙があふれ、止まらへんかった。悔やんでも悔やみきれない」と声を振り絞った。

 息子と同じ年代の学生たち。昨年5月、崔さんはなじみの鉄板焼きの店に誘った。震災前日に秀光さんと行った銭湯の場所にも案内した。10、11月には地域の焼き肉パーティーや防災訓練に招待。次第に打ち解けた。当初、敬語を使っていた崔さんは、気軽に話すようになった。

 約15分間のDVDのテーマは「つながり」。人との出会いを重んじる崔さんが大切にしている言葉だ。震災直後の写真や映像を使い、インタビューや地域防災に奮闘する様子などを収めた。

 同市須磨区出身で法学部3年の大橋秀史さん(21)=同市中央区=は「震災は授業で習ったことしかなかった。制作を通じて、崔さん、そして千歳地区の震災が身近になった」と振り返る。

 昨年末には初披露の場が設けられた。語り部としても活動する崔さんは「亡くなった息子が帰ってきたような気持ちだった」と話し、「このDVDを講演活動で使っていきたい」と笑顔を見せた。

2015/1/6