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新野幸次郎氏
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新野幸次郎氏
五百旗頭真氏
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五百旗頭真氏

 阪神・淡路大震災から20年となる。復興の課題と成果は何か。大学人として、国と自治体に提言を続けてきた元神戸大学長の新野幸次郎・神戸都市問題研究所理事長(89)と、五百旗頭真(いおきべまこと)・ひょうご震災記念21世紀研究機構理事長(71)に聞いた。(木村信行)

     ◇     ◇

【国は今も根本的反省なし】新野幸次郎氏

 (神戸都市問題研究所理事長)

 -震災直後、兵庫県と神戸市の復興計画検討委員会のトップに就くなど、民間の立場から復興構想を主導した。

 近代都市を直下型地震が襲う世界初の経験だった。この危機をどう乗り越えるか。単なる復旧ではいけないと直感した。

 県と市の両方に頼まれて座長をした。その後、元副総理の後藤田正晴さん(故人)から「県と市で意見が大きく違うと具合が悪い」と聞いた。

 結果的に、県と市が同じ方向を向けたのは良かった。

 -ひょうご創生研究会の会長も務めた。

 「汎(はん)太平洋フォーラム」という関西の研究者のネットワークが生きた。震災の数日後、作家の陳舜臣さんらも集まり、行政では発想できない大胆な提言を、と熱い議論を重ねた。

 震災は、近代的な都市の脆弱(ぜいじゃく)性を浮き彫りにした。現状復旧を打ち破る提案の一つが阪神高速の高架の一部廃止と地下化だったが、実現しなかった。

 -なぜか。

 国は焼け太りを認めなかった。県や市だけではお金がない。既成の政治機構を突き崩せなかった。

 21世紀の安全都市をどう築くか。そのために政治経済の仕組みをどう変えるのか。これが、震災が問いかけた本質的なテーマと言えるが、国は今も根本的な反省をしていない。

 -震災復興20年の評価は。

 市民がまちづくりの主役として育った。外形的な復興も、全体としては世界的に評価されている。

 ただ、高く掲げられた創造的復興は難しい問題を含んでおり、残された宿題があるのも事実だ。

 -ポスト20年の課題は。

 大地動乱の時代が迫っている。南海トラフ巨大地震の被害想定など最悪を警告するところまでは来た。だが、国も国民も本当の自覚はできていない。

 昔の人は、先人の教えを大切にしたまちを築いた。国難にどう備えるか。国民が覚悟すれば、国も変わるはずだ。

 ▽にいの・こうじろう 1925年、鳥取県生まれ。神戸大学長を経て神戸都市問題研究所理事長。阪神・淡路大震災では、兵庫県都市再生戦略懇話会座長、神戸市復興計画検討委員長を務めた。専門は経済政策学。

     ◇     ◇

【官僚制の病治ってない】五百旗頭真氏

 (ひょうご震災記念21世紀研究機構理事長)

 -阪神・淡路における官僚の壁とは。

 中央官僚は法体系の整合性がお好きだ。

 規制緩和を認めれば、兵庫は自分でお金を作る能力があった。だが「一国二制度はあってはならぬ」と特区の申し出を拒否した。

 財政的に豊かな兵庫に手厚い支援をすれば、財政的に厳しい他の地方に説明ができない。「個人補償は憲法違反」という意見まであった。個人が身に余る大災害に見舞われているときに「法体系」「国内的公平性」を持ち出すのが官僚だ。

 -国に復興構想の提言をした阪神・淡路復興委員会の評価は。

 被災自治体の尊厳はある程度尊重された。委員長だった下河辺淳さんは「兵庫と神戸ほど未来構想を持っている自治体は少ない。それを復興に置き換えて実現すればいい」と後押ししてくれた。

 だが、後に貝原さんに聞くと「下河辺さんも元官僚。本当の新しい発想は持ち合わせていなかった」と言っていた。貝原さんのロマンは大きすぎた。

 -兵庫県が掲げた「創造的復興」の評価は。

 後藤田ドクトリンが示される中、兵庫軍団はよく頑張った。

 人と防災未来センターなど防災の知的拠点の集積、淡路島の夢舞台、西宮の芸術文化センターなど、通常の復興ではあり得ないロマンも示した。

 個人補償の壁を破った被災者生活再建支援法の制定など、阪神・淡路の被災者の叫びが実績となり、社会的正当性が認められ、東北の復興に生きている。

 -官治集権は変わったか。

 一度認められた権限、予算、人員は失いたくないという官僚制の病は治っていない。

 50年前の東京五輪は「次の万博は大阪で」という余裕があったが、2度目の五輪も東京が奪った。一極集中は拍車が掛かっている。

 都市は巨大化するほどリスクが高まる。日本が生き残るために地方分権は不可欠だが、官僚に自己改革はできない。

 ▽いおきべ・まこと 1943年、西宮市生まれ。神戸大教授、防衛大学校長、東日本大震災復興構想会議議長を経て熊本県立大理事長。ひょうご震災記念21世紀研究機構理事長。専門は政治外交史。

2015/1/4

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