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山口組分裂騒動

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 1997年に神戸市中央区のホテルで指定暴力団山口組の最高幹部だった宅見勝・宅見組組長と男性歯科医師が射殺された事件は28日、発生から20年を迎えた。組織内のトラブルに端を発した抗争殺人事件は、兵庫県警が実行犯ら19人を逮捕した一方で、組織上層部の関与を立証する難しさも浮き彫りにした。山口組が3分裂の状態に陥った今、事件の教訓はどう受け継がれているのか。

■一触即発

 「どこからでも資金源を奪え。衝突もやむなし」

 指定暴力団神戸山口組から離脱を表明した任侠山口組が7月、そんな指示を組員らに出したとの情報が県警にもたらされた。

 任侠側は神戸山口組への不満を訴える会見も開くなど挑発的な言動を繰り返し、山口組を含め対立姿勢を強める。捜査幹部は「抗争殺人事件は再び起こりかねない」と指摘する。

 組織犯罪を厳罰化した組織犯罪処罰法、末端組員の犯罪に組長の使用者責任を認めた改正暴力団対策法…。宅見事件を受け、組員による殺人を防ぐ法整備は進んだが、捜査幹部は言う。

 「命懸けで対立組織を狙うのが名誉という暴力団特有の発想は変わらない。最大限の警戒が必要だ」

■崩せない供述の壁

 兵庫県内で過去20年に起きた抗争殺人事件は2件だが、捜査手法は全く異なる。

 2007年に起きた山口組傘下多三郎一家組長の刺殺事件では、県警が実行犯ら7人の容疑を裏付けるため、法令を駆使して暴力団員ら50人以上を摘発。膨大な携帯電話の通話履歴や発信地データをつなぎ合わせ、見張り役や逃亡支援者の事前行動も割りだした。

 宅見事件ではベテラン捜査員が引き出した供述を基に、実行犯から指示役へと突き上げ捜査を進めた。それから10年。取り調べをかわす術も巧妙化した。

 「指揮命令に基づかずに行われたのは極めて不自然で、ありえない」。14年1月、大阪高裁は組織犯罪処罰法違反(組織的殺人)の罪で、山口組傘下組長に懲役20年を言い渡した。

 だが、実行犯らは組長の関与を否定し続け、上層部の責任は問えなかった。通話履歴などから指示への関与も推認されたが、直接証拠を欠いたという。

 捜査員がつぶやく。「今ならどこまで上層部に迫れるか。当時の捜査手法はもう研究されているだろう」

■捜査権を拡大

 昨年1年間、全国の捜査機関に通信傍受の令状が発付されたのは40件。昨年12月には対象が詐欺や窃盗事件にも拡大され、通信事業者の立ち会いも不要となった。18年には組員が組織トップや共犯者の関与を供述すれば減刑するなどの「司法取引」も始まる見込みだ。

 捜査幹部は力を込める。「抗争事件を防ぐ最も有効な手段は、トップの摘発による組織の弱体化。対抗するには、捜査手法も進化させる必要がある」

 【宅見組長射殺事件】1997年8月28日、神戸市中央区のホテルの喫茶室で、指定暴力団山口組の若頭だった宅見組の宅見勝組長=当時(61)=が、山口組傘下の中野会の組員らに射殺された。歯科医師の男性=同(69)=が流れ弾に当たって死亡。兵庫県警は実行犯4人を特定し、2人を殺人容疑などで逮捕したが、別の2人は遺体で見つかった。うち1人は事件の総指揮役とされ、上層部の関与の解明には至らなかった。

2017/8/29

【山口組の分裂】

 2015年8月27日、全国最大規模の指定暴力団山口組(総本部・神戸市灘区)から、直系13団体が離脱し、「神戸山口組」を結成した。「山健組」(神戸市中央区)の井上邦雄組長がトップに就き、淡路市にある直系団体「俠友会」事務所を本拠地とした。

 分裂の背景には、篠田建市(通称・司忍)組長の出身母体「弘道会」(名古屋市)を優遇する組織運営や、高額な上納金制度などへの反発があったとされる。

 双方の衝突が相次ぎ、警察庁は16年3月に「対立抗争状態」と認定。兵庫県公安委員会は同年4月に神戸山口組を暴力団対策法に基づく「指定暴力団」とした。同年末の構成員数は山口組約5200人、神戸山口組約2600人だった。

 一方、神戸山口組では17年4月に一部組長らが離脱して「任俠団体山口組」(後に「任侠山口組」に改称)の結成を表明した。対立は三つどもえの構図となったが、警察庁は「神戸山口組の内紛」との見方を示しており、構成員数は不明。

 山口組と神戸山口組が分裂してから約2年間で、双方の衝突は約100件発生。神戸山口組と任侠山口組の間でも2件の傷害事件などがあったほか、17年9月12日には、神戸市長田区にある、任侠山���組・織田絆誠代表の自宅付近で、代表らが乗った車を神戸山口組の組員が襲撃。降りてきた任侠側の組員を射殺する事件が起きた。

 兵庫県警は17年5月、全部署から構成する「歓楽街緊急対策本部」を設け、その実働部隊として歓楽街特別暴力団対策隊(特暴隊)を発足させた。「みかじめ料」名目で飲食店などから金を脅し取っていたとして組員を逮捕するなど資金源の遮断にも乗り出している。

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