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山口組分裂騒動

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山口組の総本部を捜索する京都府警。分裂以降、全国の警察が捜索を重ねて動きをけん制する=2017年7月、神戸市灘区篠原本町4
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山口組の総本部を捜索する京都府警。分裂以降、全国の警察が捜索を重ねて動きをけん制する=2017年7月、神戸市灘区篠原本町4
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 指定暴力団山口組(総本部・神戸市灘区)が指定暴力団神戸山口組(本拠地・淡路市)と分裂して2年。兵庫県警がこの間に逮捕した暴力団員の不起訴率が6割を超えたのは、暴力団活動の実態把握が難しくなる中で、捜査員らが逮捕・勾留を組織の弱体化や情報収集につなげようとする意図が浮かび上がる。一方、警察権の乱用を懸念する声もあり、識者の間でも賛否は激しく対立している。

■組長逮捕の真相

 県警が6月6日に神戸山口組の井上邦雄組長を逮捕したのは、4年前に知人女性名義で携帯電話を購入したとする詐欺容疑だった。

 「起訴が見込めない」などとし、一度は逮捕を断念したという。だが逮捕の約1カ月前、神戸山口組でも離脱問題が浮上。さらに指定暴力団会津小鉄会(京都市)の内紛に絡む傷害事件に井上組長が関与した疑いで京都府警が逮捕方針を固めると、事態は急転した。

 警察庁から兵庫県警に指示があったと捜査関係者が明かす。「組織が混乱している中でトップを不在にさせる。期間が長いほど動揺が広がり、打撃になる」

 結果はいずれも処分保留で釈放。それでも兵庫と京都を合わせた勾留は30日間となり、捜査関係者は「組織の弱体化に効果があった」と胸を張る。

■逮捕者数の減少

 県警によると、暴力団員(準構成員を含む)の逮捕者数は2010年の1071人をピークに減少傾向にあり、近年は600~700人で推移している。

 1992年の暴力団対策法施行後、暴力団排除に向けた体制整備や取り締まりは強化されたが、暴力団活動は潜在化し、捜査の端緒となる情報は入手困難に。10年以降はさらにその傾向が強まり、また、分裂後に各組織内の統制が強まったことも影響するという。

 そんな中、不起訴前提の逮捕は、暴力団捜査の大きな手法になりつつある。捜査幹部の一人が解説する。「警察権は緊急性や嫌疑に応じて必要最小限しか発動できないという制約がある。ただ、今は対立抗争状態。あらゆる法律を駆使して危険な暴力団員を逮捕することは妥当な措置だ」

■暴力団側も“勉強”

 今年7月、山口組の機関紙に「あえて共謀罪を考える」と題したコラムが掲載された。関係者らによると、「われわれ任侠(にんきょう)界をテロ集団と同一視する」と批判し、法律の成立経緯や趣旨を説明しているという。

 捜査関係者によると、暴力団側もマニュアルを作るなどし、警察捜査を巡る勉強会をたびたび開催。対抗策を練っているという。

 別の捜査幹部が語る。「不起訴前提の逮捕は、組織を切り崩していく手段の一つ。資金源の摘発につなげるのが最終目的だ」

■過剰な権力行使危険/元山口組顧問弁護士の作家・山之内幸夫さん

不起訴になるとはいえ、日常生活を送ろうとするだけで警察が逮捕するのは過剰な権力行使と言わざるを得ない。知人や親族が購入した携帯電話を使っている人は一般社会でも多く、逮捕するかしないかを警察が恣意(しい)的に判断するのを許容する社会は危険だ。暴対法施行時にも懸念されたことだが、このままでは「暴力団追放」の名の下に権力の暴走を招きかねない。

■もっと現場に権限を/暴力団排除活動に詳しい弁護士の垣添誠雄さん

 暴対法施行で暴力団は情報統制を強め、警察への情報漏えいに敏感になった。現場の捜査員は証拠が手に入らずに苦労しており、指定暴力団の犯罪に限っては、もっと現場に捜査権限を与えるべきだろう。米、英、仏などの諸外国は事務所や車へのカメラ設置のほか、捜査員の潜入捜査も認めている。組員の発言や行動を録音、録画できれば自白がなくても有罪判決を取ることも可能だ。

2017/8/26

【山口組の分裂】

 2015年8月27日、全国最大規模の指定暴力団山口組(総本部・神戸市灘区)から、直系13団体が離脱し、「神戸山口組」を結成した。「山健組」(神戸市中央区)の井上邦雄組長がトップに就き、淡路市にある直系団体「俠友会」事務所を本拠地とした。

 分裂の背景には、篠田建市(通称・司忍)組長の出身母体「弘道会」(名古屋市)を優遇する組織運営や、高額な上納金制度などへの反発があったとされる。

 双方の衝突が相次ぎ、警察庁は16年3月に「対立抗争状態」と認定。兵庫県公安委員会は同年4月に神戸山口組を暴力団対策法に基づく「指定暴力団」とした。同年末の構成員数は山口組約5200人、神戸山口組約2600人だった。

 一方、神戸山口組では17年4月に一部組長らが離脱して「任俠団体山口組」(後に「任侠山口組」に改称)の結成を表明した。対立は三つどもえの構図となったが、警察庁は「神戸山口組の内紛」との見方を示しており、構成員数は不明。

 山口組と神戸山口組が分裂してから約2年間で、双方の衝突は約100件発生。神戸山口組と任侠山口組の間でも2件の傷害事件などがあったほか、17年9月12日には、神戸市長田区にある、任侠山���組・織田絆誠代表の自宅付近で、代表らが乗った車を神戸山口組の組員が襲撃。降りてきた任侠側の組員を射殺する事件が起きた。

 兵庫県警は17年5月、全部署から構成する「歓楽街緊急対策本部」を設け、その実働部隊として歓楽街特別暴力団対策隊(特暴隊)を発足させた。「みかじめ料」名目で飲食店などから金を脅し取っていたとして組員を逮捕するなど資金源の遮断にも乗り出している。

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